創作

続々・筆銀物語

ペンギンの朝はいいことをいうところからはじまる――否、はじめるべきである――と考えた格好付けのペンギンは足下を見ながら考える。 「やあ兄弟、何を落ち込んでいるね?」 「おや、おや――」 格好付けのペンギンは顔を上げ、上げた勢いで首をぐるりと回す運動…

続・筆銀物語〜どこかの誰かの言葉の中で〜

筆銀物語 百の夜が過ぎ、百の絶食が続き、一行は氷に閉ざされた世界を歩み続けた。 彼らは口々に弱音を吐いた。吐き続けた。呼吸のように。 しかし日々がいかに過酷でもペンギンたちはいつしか慣れる。踏み重ねた弱音の上に謀叛を企てる革命家気質の血の滾り…

【転載】クジラはおさかなさん【天才?】

【写真】南太平洋でデート楽しむザトウクジラ | Joongang Ilbo | 中央日報 ザトウクジラの画像は素敵なのですが、記事が…… 普段は海水温が低い高緯度地方で過ごし、繁殖期間には熱帯や亜熱帯水域に移動して産卵する 産卵て。思わずクジラが体外受精している…

カロンセ50

アリッタキユカユが死ぬとき、イナズマのやうに激しさを増して、ウクレレの調べに似た心音が、エナメルの鈍い輝きの中へ、オシロイで装った女達と、カンダラムジムジの腕に抱かれて、きえていく定めにあったが、くものような脳みその、ケニングの深みと、こ…

断片:今日読み返した一段落

レイラは強引にマキシマム*1を先行させ、その後ろを進むよう心がけていた。若い馬の尻を押し込む彼女の手は広かった。その指先があのぼんぼんの目をえぐったのだったな、と僕は思い返していた。時々信じられなくなる。この明朗な娘が僕の目の前で人を殺めた…

更新していないことが更新の動機

「線路」 「線路は続くよどこまでも」 と歌う子供の見る先は 一体どこへ通じているのだろう。 決して重なり合うことのない二本のレールは その実、分かれを知らぬ夫婦の鏡。 どこまでいっても適切な距離を保ちながら役目を全うするだろう。 錆かかった線路の…

断片:自明性の彼方に

彼が部屋に入ると早速靴下を脱ぎ始めた。そして靴下を手につけて私をテーブルへ案内してくれた。私は彼と一緒にテーブルについて、向かい合った。彼は神経質そうに眉間にしわを寄せて痙攣的に動かしていた。彼はうっかりと脱ぐのを忘れていた帽子を脱いで席…

真珠が誰に似合うかって

「バーラムユー、 バーラムユー、 羊毛を纏う者達に変わらぬ忠誠を、 変わらぬ愛を、 バーラムユー」 スタンプになるか一度は試してみたいキュートなお鼻に「プリティ」三回 耳のタブにはナンバータグ とろんとしたお目々? とんでもない! 何かに躓いて転び…

仰げば尊し

ふんわりまっしろ襟巻きの君 いつまでもうつむいていちゃいけないよ 太陽と同じ明るい顔は 未来を見据えてこそ輝くよ ミツバチ先生両手を叩いて 「空にはクジラの雲が泳いでいるよ」 みんな窓から乗り出し大空仰ぐ えっ? えっ? どこ? どこ? ほら騙された…

メモ:今朝書いたもの

僕はリヴの塔に入学してからの数日、三食のほとんどを学生食堂に頼っていた。巨大な食堂はスプーンやフォークといった慣れ親しんだ道具の方が食べやすい料理をメニューにいくつもそろえてくれていたので、僕は箸の扱いの稚拙さを克服する必要に迫られること…

20分執筆活動

http://d.hatena.ne.jp/nakamurabashi/20090926/1253895012 二十分で何が書けるか分からないが、とりあえずキッチンタイマーをセットして、はいスタート。ていうかもうスタートしていますね。このキッチンタイマーはそもそも二度寝用に購入したものなんです…

筆銀物語

ポケットに手を入れて、ふてくされ気味に歩く。えっちらおっちら、短い足を前へ、前へ。 「よう」 一匹がいった。 「もうこのへんでいいんじゃないか」 「いいんじゃないかって、なにが?」 先頭を歩く彼が振り返りもせずにいう。 「別に。いってみただけさ…

創作とは私と精霊の奇妙な共同作業であるということ

hiroさんのハイクで知ったエリザベス・ギルバートのスピーチ 「創造性をはぐくむには」を見ました。 http://www.ted.com/talks/lang/jpn/elizabeth_gilbert_on_genius.html リンク先の動画には日本語字幕もついていて助かります。 スピーチは19分32秒あ…

【プロフィール】百日書いた【更新したった−】

挨拶 タイトルの通りです。 ダイアリーもついに百日。ほぼ一周年。 はてなの扉を叩いた頃は、まだ何も知らないぺーぺーだった。 ネットでコミュニケーションなんてとったことがなかった。(今もまだネットをコミュニケーション・ツールとして利用できている…

「じゃあ、どうしろっていうの?」

ビーチで遊ぼうとしたが完全に阻まれてしまった少女 - GIGAZINEより。 テキスト 青い海原があると知って女の子は準備万端でやってきたんだ。あたしはビーチを楽しむ最高の方法を知っているのよとばかりに準備万端だったんだ。女の子と同じく華奢な犬にビーチ…

竜殺し

テキスト 鋼の皮膚を持ち火を噴くと噂される竜が森の中でその生涯を敗北に浸し大自然への大いなる愛――己を循環の中へ惜しみなく捧げる無償の愛――となったその日、全身を鎧とマントで覆った白一色の騎士がそこにいた。竜は胴体から伸びる強靱な喉を縦に切断さ…

もっと軽やかに

テキスト 雲一つない澄み切った青空の下に柔らかな稜線が連なっている。それら遠目に見える山々は緑の絨毯を敷き詰めたようであり、さらりと撫でればやはり絨毯の触感が掌にあるだろうと思わせる。私の眼前には主に白と橙の花を付けた植物が茂り、花びらの下…

机の引き出しから飛び出した青い存在は四次元の腸によって眼鏡の少年を直に腹の中に取り込んだ

テキスト 目を閉じ、苦渋ゆえの汗を球状の頭部に浮かべながら道化のごとき造形をした彼は切実なる思いを呟いた。彼の精神を逼迫させる某かの要素――それはけっして彼の首を締め付ける太い首輪がきつく締め付けてくるからではなかった――はどす黒い靄のように彼…

淡い緑に包まれた散歩道

テキスト 朝の湿り気と森の保湿力が土に落ち着きある深い味わいと冷たくも柔らかなあの茶色を持たせていたし、顔を見上げることなしには実直で逞しい幹しか見えることのない立派な樹木も長い時と強固さを感じさせる岩肌のごとき質感を持っていたが、象のごと…

血のように赤い月が出ている霧に包まれた夜の狼男

テキスト 息をするごとに男の姿は一回りずつ大きくなっていった。一枚の獣の皮を隈無く纏い変装を済ませたといった次元に留まらず、腕も、胸板も、人の頃の二倍にまで増強されていた。踵は浮き、足指と足指の付け根の辺りのみで体重を支える前傾姿勢を取った…

霧と霧に隠された水面とそこに映る像を思う

テキスト ひんやりとした大気が実体を持つとき霧は生まれる。足下から這い上がってくる冷気も、肺の中を凍てつかせんばかりの張りつめた空気も、夜が途切れ朝がやってくる、天を司る偉大な二つの性質のどちらにも属さない曖昧な境において、薄ぼんやりとした…

田舎

テキスト 空は掠れたように青く、雲もまた突風につまはじきにされたみたいになっていた。子供の頃に描いた空はいつも現実の空に比べると水を混ぜすぎていたように思うし、いくらブルーをひねり出したって空には追いつかなかったものだ。コバルトブルーを使う…

トロル?

テキスト トロルはいつものようにその巨躯を軽やかに前へ押しやり、黒く重厚な筋肉の塊を鞠のように宙へ浮かせ、両腕を威嚇気味に掲げ獲物に襲いかかった。ゴリラの腕力に耐久力、猿のようなはしっこさ、棍棒を用いる程度の発想力、あれが人類の巣に攻め入っ…

一次元化企画――想像力と現実・客観の狭間で

はじめに (一次元化とはなんぞや) 現実を三次元、漫画、アニメなどを二次元と称することはネットで頻繁に見受けられるようになったが、それでは一次元とはなにかということになると定義がなされていないのが現状である。予め断っておくが、ここで一次元と…