書くこと

近くて遠い二人の距離を

書くことを控え、推敲に没頭していると、最近曖昧になっていた読書の美的感覚が蘇ってきた。これがあるから僕は小説を読むのだなという感覚。 それはそうと、自筆の小説を推敲していると、ここぞという結びの場面で「遠くて近い」という表現が出てきて、僕は…

表現の恐怖と羞恥

中村光夫『風俗小説論』エントリ 蛇足風俗小説論 (講談社文芸文庫)posted with amazlet at 12.04.23中村 光夫 講談社 売り上げランキング: 210777Amazon.co.jp で詳細を見る中村光夫 『風俗小説論』 p30-31 この「言いがたき秘密」を胸底に抱いていたとき、…

近代リアリズムの崩壊について

中村光夫『風俗小説論』エントリ第4回。風俗小説論 (講談社文芸文庫)posted with amazlet at 12.04.23中村 光夫 講談社 売り上げランキング: 210777Amazon.co.jp で詳細を見る プロレタリア文学と新感覚派文学 P115 「新感覚派文学もマルクス主義文学も、共…

近代リアリズムの変質について

中村光夫『風俗小説論』エントリ第2回。 風俗小説論 (講談社文芸文庫)posted with amazlet at 12.04.23中村 光夫 講談社 売り上げランキング: 210777Amazon.co.jp で詳細を見る 西欧と日本の自然主義文学比較 西欧文学史で近代自然主義が台頭していた時代、…

近代リアリズムの発生について

中村光夫の『風俗小説論』の二周目を終えたので、私的メモ――まさに備忘録的な――としてエントリをあげます。 ※注意点 ・全4回のエントリ ・私(ブログ主)は日本文学に疎い。*1 ・『風俗小説論』の最後で語られる作家 丹羽文雄 についての一連の批評は氏の著…

問題点と層の話

どうにも小説がうまく書けなくなって、もう一年経つことになる。 放っておけば自然に解決されるだろうと、必死に楽観視していたが、これといって改善されなかった。非常によろしくない事態である。 しかし少しずつだが問題の核心が見えてきた。 僕はもともと…

毒吐く

今日は七時間ほどディスプレイに向かっていたが、キーボードを叩いては手を止め、叩いては手を止め、デリートキーを連打し、ドラッグで文章を反転させては削除していた。普段の一、二時間分しか書けていないし、その内容についても、何ら納得できていない始…

モグリ

書かなければ時間がない。決定的に――。 平日は忙しい。書くためにはまとまった時間がいる。短い時間を数珠繋ぎにつなぎ合わせることでは到底辿り着けない境地がある。そこは深いから、潜っていくために準備運動が必要だし、息をたっぷり吸い込まなくてはいけ…

スランプを脱する薬が欲しい

文学的守護霊 ここ二ヵ月間の執筆量が通例の半分を下回っている理由は、書きたいことがないためではなく、書きたいことが多すぎるからだ。夜空を流れる一筋の星は美しいが、満天の星の全てが銘々で思うままに飛び交い始めたならもはや収拾のつかない事態にな…

書きたい欲望、読まれたい欲望

こう考えてみてはどうだろう? 書きたい欲望と読まれたい欲望は別個のものである、と。 どうしても読まれにくい形でしか書けず、しかしそれが自分にとって解毒作用を期待しての急務であるというのなら、そのように書くしかないのだから、逃れようがない。 だ…

よき文章の根元を司るたった一つの真実(会話仕立て)

「僕だってはじめのころは、ちまたでいうところの文章力を養おうとしていたんです。読点を適切に打ち、意味の取りやすいよう短い文章を心がけ、曖昧だったりどちらとも取れる表現を控えるよう努めていたんです」 「新聞記事のような……?」 「そうです。コラ…

詩と散文の私的なイメージ

あくまでイメージの話 私にとって散文とは、表面をなぞるものであり囲うもの。言葉は曖昧で、実体がなくて、常に不完全で、それゆえに「まさにこれ」と指で指して示すことができず、伝えたい事柄の周囲を行ったり来たりして覆うことでその中心にあるものを連…