竜殺し



テキスト

 鋼の皮膚を持ち火を噴くと噂される竜が森の中でその生涯を敗北に浸し大自然への大いなる愛――己を循環の中へ惜しみなく捧げる無償の愛――となったその日、全身を鎧とマントで覆った白一色の騎士がそこにいた。竜は胴体から伸びる強靱な喉を縦に切断され、その致命傷は口の端にまで至っていた。かの暴君の命を絶った一撃を下したものが白き騎士でないことは明白であった。竜の傍らの野の花が赤く染め上げられているというのに騎士には返り血の一つも見あたらなかったからである。また、騎士の腰に携えられた刃物ではあまりに細すぎて暴君を引き裂く一撃は想像しかねるのだった。
 騎士はこちらを嘲っている唇に見えもする竜の傷を目で追った。傷は喉のみにあらず胴体にまで繋がっており、重量級の肉体を支えていた骨格の一部が露出していた。顔を覆い尽くす兜の内側で騎士が何を思っていたのか当人以外の誰も知りはしなかった。

呟き

 きっとこの騎士が竜を殺した本人なのだろうけどその解釈は控えてみた。返り血の一滴も浴びていないなんてあり得ないのだし。
 とりあえず、密かに週に一度の課題としていた一次元化も、このあたりで終わりにしようと思う。週に一度ではなくなるだけで、またするだろうけれども。(でもネタに困らないから有用なのだ)
 一枚の画像を文章に起こそうとすると、どうしてもどこかに偏りを生じてしまう。もっと主観的に対象を捉え、人類以外の他の知的生命体をも驚嘆させ引きつけるような特異性を持つべきだ。