カロンセ50

 アリッタキユカユが死ぬとき、イナズマのやうに激しさを増して、ウクレレの調べに似た心音が、エナメルの鈍い輝きの中へ、オシロイで装った女達と、カンダラムジムジの腕に抱かれて、きえていく定めにあったが、くものような脳みその、ケニングの深みと、ことばの嵐が、サナンドの島をこれでもかと襲い、シーラカンスの千年の夢を、スクリーンのように際限を意識させない広さで、スミレのやうに青く染まつている、せかいの表面を覆い尽くす、その空へ映し出し、たにがわしゅんたろうは、チリンボランの花を、つむことを思い、テレメンギにそなえよと告げ、トリメラをも空へと映し出し、ナジャがそうであったやうに、にんげんばなれした奔放さで、ヌイコネは跳梁し、ねぐらへと真っ直ぐ飛び込んでは、のんべんだらりと横たえ、はなもちならぬ鳴き声で嗤い、引きつった笑みを張り付け、ふりかえり詩人を見やり、へそで茶が沸くであろうと、ほらを吹くし、まじめな顔で、みんな死んでしまう定めだと、むなしく息を吐き、めを閉じるのであるが、もちろん詩人は、やはり、ゆめは、よるにこそ見るものと、ラダの港で吼えた英雄を憂い、りくつなど抜きに、ルビイの涙を流しては、レンガの赤みを閉じた瞼の内に浮かべ、ローレライの偉大なる勇者、われらのアリッタキユカユ、を天に導けよと、ンジャメナのない方角へ呟く。
 
 
 
 先生! 「カロンセのうた」が分かりました! つまり、こういうことですね?――そこには笑顔の元気な少年が目を輝かせて立っていました。
 
 
 
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