読書

語りの海を漂いながら――灯台へ

著者 Virginia Woolf (ヴァージニア・ウルフ) [1882-1941] イギリスの作家。モダニズム文学の旗手。 『灯台へ』は、我が人生の書の一つ。まだまだ若造の私ですが、残りの人生にこれを超える作品に出会うことはないだろうと思っています。 感想を一言でいえ…

うすぼんやりとした光

題名 愛の完成 著者 ロベルト・ムージル 発表年月日 1911年愛の完成・静かなヴェロニカの誘惑 (岩波文庫)posted with amazlet at 10.10.30ムージル 岩波書店 売り上げランキング: 414938おすすめ度の平均: きもちわるい 退屈の美学 合一Amazon.co.jp で詳細…

普通の速さで歌うように

『モデラート・カンタービレ』 著者マルグリット・デュラスのような情熱的な恋をしたことのない私には、この物語は難解すぎた。 情熱という語からはスポーティかつボーイッシュな色彩を感じるが、海を隔てたあちらのお国では、パッシオンという語には殉教・…

『人生論ノート』――死について

近頃私は死というものをそんなに恐ろしく思わなくなった。年齢のせいであろう。以前はあんなに死の恐怖について考え、また書いた私ではあるが。 哲学者である三木清の『人生論ノート』は私の愛読書だった。ここのところ繙いた記憶はないが、すでに二桁に達す…

世界一有名なネズミより世界一賢いクマが好き

たまにはトンデモ本の紹介でもすんべー。 あ、タイトルは内容とほとんど関係ありません。ごめんなさい。 でもプー・ベアーの話ですよ。関係ないのはネズミのほうです。 クマのプーさんの哲学posted with amazlet at 10.02.14ジョン・T. ウィリアムズ 河出書…

『蔵の中』に見る語りの力

思い川・枯木のある風景・蔵の中 (講談社文芸文庫)posted with amazlet at 10.01.24宇野 浩二 講談社 売り上げランキング: 111409おすすめ度の平均: 宇野浩二の本領発揮 思い川Amazon.co.jp で詳細を見る 書き出し そして私は質屋に行こうと思い立ちました。…

柔らかい土をふんで、を読んで、

『柔らかい土をふんで、』を読んで、私は去年すでに数回も味わってしまった挫折を今年に入ってまだ一時間というところでまた味わいました。(深い読みができるようになったのに反し、読書への集中力や持続性が失われてしまっていることに早くも老いを感じて…

『いちねんせい』と僕

あの奇妙な絵本が家にやってきたのはいつの頃であったか。とんと記憶にない。いつの間にか家にあった。母が買ったのではないらしいことは覚えているが、それすらも確かな事実とは言い難い。 その絵本は題名を『いちねんせい』といい、小学生の頃、文字を読む…

折に触れては読み返す、『文章教室』

昨日は土曜日だというのに仕事があって朝の四時に起きて六時から働きはじめ、ひとりきりで二つの機械を動かし、定時で帰宅する楽しみを雨上がりの空に見上げたのだが、帰宅途中に今週の疲れが汗と共にじんわりと滲み出て、ガソリン代と車の安全点検と車検ま…

静かに死ねぬ老人の罰は娘の命をも巻き込むのか

『リア王』を読み終わった。 光文社古典新訳文庫 安西徹雄訳 作者はもちろんシェークスピア。 序盤、リアはただの癇癪玉、頑固オヤジ Wikipediaから引用しますに―― ブリテンの王であるリアは、高齢のため退位するにあたり、国を3人の娘に分割し与えることに…

バタイユでバタンキュー

自分が世界でもっとも倒錯した人間ではないと知りながらも、自分以上の変態に出逢いなおかつその強度に圧倒されたとき、我々はなぜかくも敗北を覚えるのか。自分など変態と呼べるレベルではなかったのだという事実をなぜ祝福できずに、負けた、と唇をかみし…

おお神よ、彼を救いたまえ

神さまや、過剰な労働というリングからおろしておくれ。読書もできやしないだなんてのは、そいつは、なしだぜ。 いつから読んでいるのだろうか、『存在の耐えられない軽さ』を。『アブサロム、アブサロム!』が出だしの美麗さに比するとあまりに冗長で、味読…

オレだって共通の魂を持つ女を愛したいんだぜという人が好きなのは『嵐が丘』

はてなキーワードなんて、これまでほとんど使っていなかったのだが、ダイアリー市民になったので早速使ってみようと考え、キーワード「嵐が丘」を作成した。かの大作がキーワード化されていないのはけしからん、とか思って。その際に好きなキーワードをお気…

真面目に物語を作ろうとする人は『鈴木先生』を読んで自殺するしかない

鈴木先生 6 (アクションコミックス)作者: 武富健治出版社/メーカー: 双葉社発売日: 2008/11/28メディア: コミック購入: 3人 クリック: 18回この商品を含むブログ (71件) を見る 『鈴木先生』六巻 死ぬ。 物書きを志して以来、小説に心を折られたことはないが…

瞬殺王クロード・シモンorz

アマゾンから本が届いた。 『フランドルへの道』 『ファルサロスの戦い』 クロード・シモンとは…… ああ、いやいや、ウィキペディアを引用しましょう。 クロード・シモン(Claude Simon, 1913年10月10日 - 2005年7月6日)は、フランスの作家。アラン・ロブ=…