メイド忍者
時間泥棒をあなたに
今回は、ネットで入手できるフリーゲームの紹介です。
タイトル:『Ruina 廃都の物語』
ジャンル:RPG
作者HP:http://homepage1.nifty.com/blackhat/ftotfr/game.htm
ゲームブック風に進行されるRPG。超美麗3Dグラフィックにより描かれる広大な世界を闊歩する最新RPGに対して「ダンジョン歩き回るのメンドクセ」と思う方にお奨めです。
舞台はファンタジーでお約束の中世時代を思わせる町。主人公は何かに呼ばれるようにして町の地下に眠るダンジョンの入り口を見付けます。そこには古代の都市アーガデウムで栄華を極めた英霊が眠っており、古代都市を地上に蘇らせようと目論んでいるのでした。
本作は個性豊かな10人もの仲間が揃っており、その10名それぞれに過去や野望が作り込まれております。主人公を含め3人一組のパーティを基本とし、十人十色の冒険が楽しめる信じがたい出来映えのロール・プレイングです。
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メイドかつ忍者
10人もの冒険の仲間がいるわけですが、今回は領主の館に勤めるフランをとりあげながら本作の魅力なりシステムなりを紹介したいと思います。
フランは作者曰く「メイド忍者。この一言で説明が済む便利な人。」
いや全然説明がついてないですよ、なんですかメイド忍者って。メイドで忍者って。想像もつかない。ところが顔グラを見てみるとメイド忍者というレッテルが正しくて仕方がないような気がしてくるから不思議です。
メイドに萌え属性があることを知ってはいても感じたことのないわたくしめでしたが、メイド忍者には萌えました。(エセ和風というやつは萌えの基本ですね。もっとも、フランのどこが忍者なのかよく分かりませんが。)
メイドというと給仕が仕事。料理が特技であるのも頷けます。
が。
特殊技能で料理のスキルの説明を見てみると……
▲「食材を加工して料理を作れたらいいですね。」
いいですねって、なんですか、いいですねって!
ここで、遅れながら料理というスキルについて説明致しましょう。
RPGでは「料理」コマンドはおおよそ「二つ以上のアイテムを合成して回復アイテムを得る」スキルだと思われます。本作もご多分に漏れずその手のスキルです。「果物」「魚」「野菜」といった入手の容易く、回復量の低い食材アイテムを組み合わせ、回復量の高い料理品を得る仕組みです。ただし、それはまっとうな料理スキルのあるキャラクターに当てはまることです。光あれば影がある。陽があれば陰がある。料理にも裏と表がある。裏の料理の使い手のことは作中の某キャラクターによって「暗黒料理」と称されています。漫画などでよくある、米を洗剤で洗ったり、カレーを作らせるとあり得ない色のカレーを作ったりするあの手のネタです*1。お馴染みのネタですが、本作の暗黒料理の特級厨師の破壊力は尋常ではありません。たとえボスだろうがお構いなしに屠ってしまう暗黒料理の破壊力、是非ご賞味していただきたいものです……。
▲このような食材も……
▲チョッパーに海賊のしるしだと間違われそうなドクロマークアイコンのあるアイテムに……!
フランは紛れもなく暗黒料理忍です。どうしてこうなった、といわざるをえない「焦げた石」、これは料理品なのか。何を煮込んだのか分からない、どう見ても毒でしかない「マッドシチュー」は悟りの境地にある上人様の平常心を切り崩すほど。人体錬成さながらに生命を作り出すことさえする暗黒料理。特に序盤はフランの得意料理「ポララボ」に助けられます。
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フラン×キレハ
ホララボに関するやりとりを参照してみましょう(本作はシフトキーで仲間同士の会話を楽しめるシステムとなっています)。以下は弓と魔法を使う遊牧民キレハとのやりとりです。
▲どうつっこんでいいものか分からずに当惑するキレハの顔が思い浮かびます。
魚をベースに果物をあわせるとポララボの完成。HPが尽き果てて戦闘不能になった瀕死の仲間も息を吹き返します。
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フラン×アルソン
『廃都の物語』では主人公の生まれを四つの選択肢から決めることが出来ます。これによりストーリーの細部が変化します。「騎士の嫡子」ルートを選択すると主人公は町の領主の家に生まれます。領主の館で給仕を勤めているフランや騎士であるアルソンとは必然的に関わりの深いルートとなります。(ちなみに、フランがメイドだからといっても、彼女のご主人様という立場になれるのは「騎士の嫡子」ルートだけです。彼女と添い遂げられるのももちろんこのルートだけ。)
騎士ルートの主人公、フラン、アルソンでパーティを組むと攻撃特化型の脳筋トリオの完成です。フランの盗賊スキルが宝箱や扉をガッシャンガッシャンと解放してくれるのですが、古代の知識に欠けるため、遺跡探索をしているとパーティみんなして肩をすくめている(と想像される)場面が頻発します。
アルソンは朗らかな好青年ですが、フランとはまた違った意味で強度のある天然キャラです。フランはツッコミ待ち型の天然ボケをやらかしますが、アルソンは突っ込んだら負け型のボケであなたを振り回してくれることでしょう。
そんなアルソンとフランのかけあいが、こちら。
▲場所は幽霊の出てくる宮殿。キレハにも定評のあるズレっぷりを披露するフラン。
▲他の登場人物とのやりとりもありますのでお試しください。
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最後に
主人公の生まれ、性別、パーティに加える仲間ないしは好感度――ストーリーの分岐点は様々にあります。話の本筋は一本ですが、それは木の幹のようなもの。枝の形、葉の形、紅葉、つける実によって『廃都の物語』という一本の樹は私たちをまったく飽きさせません。同じ道も、何を目指して歩くか、どのようにして進むか、誰と共に往くかで違って感じられるものです。
あなたはこの物語をどのように歩みますか?