麻雀本放浪記
前回に引き続き、新たに読んだ麻雀本の感想を書く。
『現代麻雀技術論 実践編』
『麻雀基本形80』
『魔神の読み』
以上の三冊を読んだ。
どれも良書だったが、とりわけ上二つがまさに求めていた内容だった。
『現代麻雀技術論 実践編』

- 作者: ネマタ,福地誠
- 出版社/メーカー: 洋泉社
- 発売日: 2014/11/05
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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いわゆる立体何切る本。
手作りの基本演習が21題、
押し引きの基本演習が21題、
状況判断の基本演習が18題、
応用演習問題が30題、
合計で90題あります。
模範解答としてはネマタ氏の回答が正答とされています。
ある意味では正答率=ネマタ度であります。
それが絶対の正解ではないだろうと疑問を持つ読者もいるでしょうが、
応用演習問題以外は福地先生の回答コメントも併記されてますし、
応用演習問題からは福地先生ばかりでなく麻雀プロや元プロ、天鳳位の方々も回答しているので、
自分の打ち方にとってバランスのよい回答を参考にすればよいかと思われます。
ぼくは全然正解できませんでした。
自分の弱さがはっきりと分かる一冊。
読めば読むほど力がつきます。
コラムとして堀内元プロがプロ連盟を脱退した経緯がおもしろおかしく語られています。(失敬!)
はてなでも当時、結構なブクマがついていた話題です。あの一件の真相が、今明かされる……!!!みたいなノリで。
ところで、ぼくはニコニコ動画にぐっさん(またの名を国士、G3龍門。詳しくはニコニコ大百科参照)があげている麻雀実況動画を見て麻雀のなんたるかを学んできました。堀内元プロの回答がデジタル色強めで、ぐっさんとかなり似通ってました。
(※ ここから若干のネタバレを含みます)
たとえば、5200をダマるか曲げるかで、みんなダマと答えてるのに堀内元プロだけリーチなんですね。
ぐっさんも5200は曲げるはず。ザンクは鉄リー、ゴンニも曲げてよし。平場の世界はマンガンで回っているのです。
序盤に出た白を鳴いてヘッドレスにとるか否かの問題でも、回答する前からネマタ流ではスルーなんだろうなと分かっていたものの、国士流では鉄ポンで、堀内元プロも鉄ポンでした。
バラ手から何を切るかという、こんなものに正答なんかあるか、と突っ込みたくなる問題ではみなさん回答がばらけてましたが、ここでも堀内元プロだけドラ字牌切りで国士流に近い。次は間違いなくダブ東先切り。
読みができる雀士と読みの技術に乏しいデジタル雀士の違いが如実に表れていると受け止めました。
デジタル雀士って名前の響きからすると厳密に打ちそうですが、その逆なんですよね。統計的正着ではこうなっているから深く考えずリーチ、みたいな感じで。一発やハイテイやカンによる新ドラ・裏ドラについても「マンガン天井あるから打点が上がるのはレアケース」といって無視するのは一種の図太さに通じてます。
読みを駆使できる人たちはそのへん繊細で、代わりにねちっこく打点を追うといった印象です。
『これだけで勝てる!麻雀基本形80』

- 作者: 福地誠
- 出版社/メーカー: 竹書房
- 発売日: 2014/07/10
- メディア: 単行本
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いわゆる5ブロック理論をマスターすることにより牌効率の基礎を完成させようとする一冊。
タイトルに80とあるが、載っているのは73題なのは なぜなのか。
1ページ使って何切る問題の牌姿が印字され、次の1ページで要点を解説するつくり。
これには衝撃を受けました。
牌効率の本は読んだことがなかったので、そこだけザルのように穴だらけ。ネット麻雀を始めて、かれこれ二年と三ヶ月、完全に自力で牌効率を磨き続けてきたのですが……
そんなことをしていた時間がもったいない。
本書を読めばすべて解決。
自分で発見した法則のすべてが載っていました。それについては自分の正しさが証明されて嬉しかったのですが、アンコ順子の項目に入った42題目からは不正解の連続。目を背けたくなるような複雑な多面待ちに息も絶え絶え。やはりザルでしたorz
しかしどの問題も「レアケースだからできなくてもよい」ではなくて、頻出の形であったり、応用がきく基礎であったり、覚えておけば得をする強い形であったりと無駄がありません。
何より感心したのは牌効率の筋力がついていく実感を現在進行形で味わえる興奮です。
麻雀というゲームにおいて、一分前の自分より強くなっていると確信できる瞬間なんてほとんどないんですよ。ところがこの本を読んでいる最中はずっと成長し続けられるんです。
「牌効率の本」とか、
「本を読んで牌効率を学ぶ」とか、
聞いただけで肌がむず痒くなるぐらい抵抗感あるじゃないですか。
退屈で、それでいて難しくて、モチベーションあがらないんだろうな〜と思うじゃないですか。
違うんですよ。
平易な作りの本なのに読んでるとテンションあがってくんです。
こんな本を作る人はよっぽど麻雀を愛しているか、誠実な人に違いない。
「でも、お高いんでしょう?」
「いえいえ、ここまで尽くして574円(税抜き)なんです」
コストパフォーマンスは、麻雀本の中では間違いなく世界最強。
初心者、中級者の必読書です。
ちなみに捨て牌読みの基本を扱ったページもあります。
序盤に切られた牌の外側は割りと通る法則です。
ちゃんと牌効率ができるようになると、自然と相手の打牌も分かってきて、なんとなく読めるようになってきます。ぐいぐい回し打ちしていくときや安牌水増しして強引にオリるときにも牌効率の知識は役立ちます。
牌効率がよくなれば攻める機会が増えます。攻める機会が増えれば余裕も生まれ、無理に攻める初心者的な悪癖を捨ててオリるべきときに素直にオリられるようになります。
攻撃こそ最大の防御。
まさに基本にして奥義です。
『魔神の読み』

- 作者: 渋川難波
- 出版社/メーカー: マイナビ
- 発売日: 2012/09/13
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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天鳳十段の腕を持つ渋川さんの戦術書。現役のプロ雀士。
理論編、推理編、実践編の3パートに分かれている。
理論編では基本戦術について書かれている。
さすがに現代麻雀技術論と内容が被ってしまうのは、あっちの網羅性が病的なせいなので仕方ない。
こっちの方が平易な文章で読みやすいぶん、一般向け。
脱・昭和麻雀として読むのもよし。
推理編が本書の目玉かと。
麻雀でもっとも差がでるとされるのがフーロ対処技術です。
そこでものをいうのが読みの技術。
渋川流ではテンパイ直前の手出しだけでなく、その前に切られた牌まで合わせて読みを行います。
最終の手出ししか覚えていられないぼくには、まだ早い一冊でした。
山読みの基本についてもロジカルに説明されています。
実践編では実践譜の解説を通じて著者の戦術がどこまで機能しているかが語られます。
鳴き読みと山読みを学びたい方にはおすすめの一冊です。
−−−−−
これで読みたいと思っていた麻雀戦術書はあらかた読み終えました。
すべて読み終えた上で、初心者が一から麻雀を学びたければ、次のチャートに従うのがベストと考えます。
『新・科学する麻雀』で麻雀の定石を学ぶ。
・1ハンあればテンパイ即リーチ
・先手をとられたらベタオリ。ケイテンもみない。
・役有りマンガンはダマ。
・追っかけリーチは良形なら相手の半分の点数、愚形なら同等の点数が必要。
など。
↓
『これだけで勝てる!麻雀基本形80』で牌効率を磨く。
・5ブロック理論をマスターする。
・多面張りのチャンスをものにできるようになる。
・テンパイ速度と打点の高さを両立させられるようになりたい。
↓
『現代麻雀技術論』で綿密な押し引き判断、体系的な牌効率を学ぶ。
何が重要かは自分で考えるべし。
頭でっかちになっても仕方がないので気軽に読むべし。
とりあえず高打点フーロに下りられるようになるべし。
↓
『現代麻雀技術論 実践編』を読み、これまで培ってきた自分のフォームの正誤をチェックする。
・押し引き判断を大きく違えていないか?
・点数状況判断を視野に入れているか?
・その局の目標はなにか?
・その局の目標に対して配牌から最も現実的な手はなにか?
後はお好きに。
−−−−−
これまで読んできた本には書かれていなかったことについて。
・フーロの打点読み
フーロの打点読みはかなりの基礎技術にはいるはずが、触れている著作がひとつもなかった。
鳴き仕掛けのテンパイ確率は綿密に表にされていたり、明瞭にまとめられていたりするのだが、
高打点フーロにオリるべきとは書かれていても、打点読みについては一切記述がない。
なぜだろう。
皆、書く必要もないぐらい当たり前にできているのだろうか。
ぼくはぐっさんの動画で知るまで打点読みなんて全然できなかった。
打点読みのためには、まずは役を読む。
役牌バックか、鳴きイッツーか、鳴き三色か、タンヤオか、チャンタか……
そして役に対して使えるドラの枚数をチェックする。
自分の視界から見えていないドラの1/3は他家の手にあると見なす。
たとえば、
ドラが九萬なら、タンヤオでは使えず、
自分の手の中に赤ドラがひとつあって、河にも赤ドラがひとつあれば、
使えるドラは最後の赤ドラ一枚だけ。
この場合、ほぼタンヤオのみの1000点で、高くてタンヤオ赤ドラの2000点。
2000点ですら事故扱いでいいぐらい1000点濃厚。
僅差で競ってる相手でない限り恐るるに足らず。
ところが赤ドラが見えていなかったり、ドラが二萬だったりすると、
ドラがトイツで頭になっているのでは? とか、
晒されていないメンツに赤が組み込まれているのでは? とか、
いろいろ疑ってかかる必要が出てくる。
タンヤオ ドラ3で7700点とか十分あり得ると思ったら即座に撤退する。
その役に振り込まない牌を切ってオリる。
(こういうことを意識しているうちに打点だけじゃなくてアタリ牌もなんとなく絞り込めるようになっていく)
・ダブルツーチャンスがかかっている牌はスジと同程度に安全
これもぐっさんの動画から。
ノーチャンス(壁)は信じられるし、
ワンチャンスも他に安牌がなければ頼るが、
ツーチャンスなんて誰も信じない。
ところが、そのツーチャンスがダブルになると安全度が増すという。
なんでも、確率というやつはかけ算になるほど薄くなっていくらしい。
条件Aかつ条件Bかつ条件C……ともなるとレアケースになる。
他家からリーチがかかったとき、
自分の手に萬子で12233とあったなら、
条件A「残り2枚の二萬を持っている確率」
条件B「残り2枚の三萬を持っている確率」
条件C「二三萬の両面ターツが最後まで埋まらず最終の待ちになる確率」
といった具合に条件が重なりに重なって、発生しにくくなる。
というわけで、このときの一萬は無スジであったとしてもかなり安全である。
らしい。
どこの本にも書いていないから真偽が分からないのだが、ぐっさんは正しいと言っていたし、ぼくもこの理屈に頼って打っている。
というか、今冷静に考えてこの一萬は安全だわ。
だいたい通る牌だわ。
それがスジ程度なのか、それより安全なのか、そこんところはよう分からんのです。
(そしてこういうことを考えているうちに他家の使いやすい牌、使いにくい牌、欲しい牌が分かってきて、手牌読みや山読みの技能が少しずつ身についていく)
・ケイテンは強い
ことごとく、ぐっさんの動画から。
福地先生は放銃の方が痛いからケイテンが強いと言われても納得しかねるというスタンスらしい。
対してぐっさんは、ことあるごとにケイテンは強いと述べていた。
自称・ケイテン系雀士の言である。*1
ケイテン料の平均が2600点程度。
2600点といえばマンガン(8000点)の1/3だ。
つまり3回ケイテンとれて、1回マンガンに放銃してトントンの計算。
どんな危険牌であったとしても放銃率は15%程度だろう。
通常時の押し引きとは異なり、流局してしまえば、それ以降は危険牌を切る必要がない。
だから「ケイテンのために無スジ2枚なら押しても良い」とぐっさんはいう。
なお、終盤の無スジ456や染め色の牌は危険すぎてケイテンのためとはいえ押せない。
この理屈を公式化してる本はどこにもない。
ケイテンのためにどこまで押して良いのか、どのような状況なら押すべきなのか、
そういったデータを見てみたいと思います。
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ちなみに、『麻雀放浪記』はこれから読みます。
*1:ケイテン強者にして点数状況判断の鬼。それがぐっさん。素人目線からすると地味すぎる。