ささいな夢


 焼いたCDから槇原敬之の『どんなときも』が流れていた。

 どんなときも どんなときも
 ビルの間 窮屈そうに
 落ちていく夕日に 焦る気持ち 溶かしていこう

 赤信号で停車する車。普段と違って人気のない歩道。時間が止まっていた。特別美しく見える夕日を見ながら、これが特別でなくなればいいのにと思う。逆光で陰になっている高速道路のドーム状の覆いに接している夕日は、むしろ卵の黄身を思わせた。中身が半熟のままの卵のフライの味が舌に広がる。焦りも、不安も、忙しなさも、溶けることを知らないが、卵黄だけは心地よく溶ける。
 こんなの、やっぱり、特別じゃない方がいい。毎日も困るから、隔週程度で丁度いい。綺麗な夕日と半熟卵のフライ。



 信号が青に変わる。