本が届いた

非実在会社ではない実在会社はてなのブログ書籍化サービス

 今週はずっと忙しかった。どれくらい忙しかといえば、はてなハイクで「おはよう」を投稿する気にもなれないぐらい。よく事故を起こさずに済むと我ながら感心するバッド・コンディションで帰宅し、すぐに眠っていた。
 ところが今日は空が明るいうちに帰ることができた。夕日の輝きは朱色ではなく糖蜜の輝きに似ていた。薄い青空に白い雲も、まだ黄昏に時間を譲るつもりはないと言っている様子だった。もうすぐ六月だというのに風は冷たい。
 家にたどり着くと本が届いていた。はてなハイクで活動中のグループ「HAKONIWA」で作った本だ。(作ったもなにも、書籍化にあたってはusauraraさん一人に任せきりでした。この場を借りてお礼を言わせてください。この度はお世話様でした。)
 本は、昨日届くはずだった。家に誰もいなかったので、運送会社のトラックは訪問したことの通知だけをポストに放り込んでいた。疲れて帰宅した私に親が尋ねた。
はてなっていう会社は、ホンマにあるん? それとも、どこの会社か(運送会社の人も)分かってへんからはてなってしてあるん?」
 実在の会社ですよ、もちろん。はてなという社名です。
 
 

(漫画とカロリーメイトは大きさ比較のため)
 
 
 

もくじを見るだけでぞくぞくする。あるいは、もくじも詩なのか。


 
(以下、内輪向けの感想)
 
 しょっぱなのid:arabasterさんが一番嫉妬を誘います。特に「えんそく」は、個人的に、近くて遠いところがたまりません、書けそうで、書けないところが、悶絶もの。個人的なことをいってもいいブログなんていう場でわざわざ「個人的に」だなんてことわらなくてもよさそうなものですが、私自身の感覚が自分でおかしいと思うので、ついつい付け足してしまいます。だって、「へっちゃら」が「へいちゃら」と表記されているだけで百回はうなづいてしまう。それだけでおなかいっぱい。
 
 お次はid:COLOCさん。どれもこれもひとことでいえば「うひぃ〜!」なものばかり。中でも「哀愁のペンギン座」はうひぃ〜! ラストから二行目の「ますますみえないよ、ペンギン座」がうひぃ〜! ついつい、うひぃ〜! と唸ってしまうこの気持ち、どうにもしようがありません。
 
 三番手、id:dame_kanaさんのは、言葉の持つイメージの喚起力がすごい。現実的な言葉も抽象的な言葉もレトリックも目に見えるモノになる。視覚のようでいて視覚ではないイメージ感覚が捉える世界は明瞭な対比で構成されて、白と黒の切り絵のよう。決まりすぎて、裸足で逃げ出したくなります。
 
 id:dancingleoさんの作品にはいつも温もりがあります。いつまでも浸っていたいぬるま湯のあの極楽が。でも長居すると大変、不意に切なくなって泣けてしまう、そんな優しさを感じます。落ち着きと哀愁を経た最後には、そこはかとなく元気が出てくるのです。
 
 続いて、id:nadja5さん。いつも、はてなハイクからHAKONIWAのページに飛んで、画像の配置を確認しています。そこだけ世界の法則が変わってしまった異質な感じが一呼吸で分かってしまう文体に惚れ惚れ。モノクロで想像される物語の中に、ときおり部分的に写実的な色彩が喚起される。そんなイメージでいつも読んでいます。
 
 そしてid:keiseiryokuさん。あらまあ、よかったですねえ、一人だけ見劣りしたらどうしようかとひやひやしてしまったのも杞憂に終わって。書籍化されたことで等身大より格好がついているのかもしれません。いや、でも、本当にいいわあ、自分のじゃないみたい。
 
 最後を守りますはid:usauraraさん。テキストとイラストのコラボレーションというHAKONIWAの王道テーマで攻めて攻めて攻めまくる。毎度毎度、やられた! という気にさせられて、ハンカチを口に噛み引っ張ります(←表現古いなオイ)。「バルーン」と「ファンファーレ」がすごすぎて言葉もありません。これが書籍として手元にあることがHAKONIWAの活動に参加したことの最大の恩恵です。
 
 
 

今期も頑張ったり頑張らなかったりしましょう

 よい作品に出逢うと、情念が様々に沸き立ちます。「うひょ〜!」や「ムキーッ!」といった衝撃は作品に圧倒されるかたちで胸に雪崩れ込んできます。その衝撃にいくらか慣れてからか、本を閉じてしばし経った頃が、一番おいしいかたちで作品を好き勝手に貪れるようになります。押さえつけられていた腕がのいた後の小動物のように、心と言葉が自在に躍動して、今ならなんでも書けると思う、そんな瞬間を持つのです。
 熟れた果実がついに枝を離れる瞬間の、もっとも強く感じさせる引力が、皆様の胸にも生まれますように。