季節の精霊

 
 保育所の頃、読んでもらった絵本には、
 地下に住む小さなおばあさんの出てくるお話があった。
 冷たい冬を越えて、
 緑色のイチゴが艶やかに朝日を浴びる。
 おばあさんは地下から出てきてイチゴを赤に塗り替えていく。
 
 僕は少しのあいだ、イチゴが食べられなくなった。
 絵の具がついているものを食べるわけにはいかないから。
 作り話と知っていても、イチゴの赤は赤色として出来過ぎていた。
 子供ってそういうもの。
 変な影響を受けやすい。

 僕を救ったのは青い部分の残るイチゴ。
 おばあさんの塗装が間に合わなかった可哀想なイチゴ。
 硬くて酸っぱくて不完全。
 やっぱり完成された味の方がいいので、僕は真っ赤なイチゴを食べた。
 
 それにしても、不完全な方が自然に見えるだなんて、本物の自然というやつはなかなかやりおる。
 と、青い僕は思ってた。
 
 
 

 この画像を見ると、いつもその絵本のことを思い出す。