ウザク本

 
 なにやらウザク本第二弾が出る予定らしいので、第一弾の感想を遅まきながら、やる。
 
 ウザク本第一弾。
 すなわち『麻雀 傑作「何切る」300選』
 

麻雀 傑作「何切る」300選

麻雀 傑作「何切る」300選

 
 中身の雰囲気はグーグルで「ウザク本」で画像検索すれば一発で出てくるはずなので、こちらから説明することはなにもない。
 
 
 
●麻雀における牌理の意義
 麻雀で一番重要なのは牌理である。
 そもそもテンパイもしくは好形イーシャンテンをつくれなければ押せる場面などやってこないから、押し引きなど関係ない。
 牌理を鍛えることで好形率も高まる。
 好形率が高まればツモによる打点向上、めくり合いでの勝率向上につながる。そもそも好形ならだいたい押しなので押し引きなど関係ない。
 牌理が鍛えられれば副産物として山読み、他家の手配読み、河読みも鍛えられる。
 回し打ちが有力な場面も分かってくる。
 
 
 
●ウザク本の効能
 効能としては、一周する(300問解く)ごとに実力がワンランクあがっていく。
 天鳳の段位でたとえると、ざっくり一段。
 三段のプレイヤーはウザク本を三周すると六段になる。
 周回を重ねるごと効能は目張りするものの、鳳凰卓入りするまでカンストすることはないと思われる。
 
 
 
●ウザク本の欠点
 問題点としては説明が簡潔すぎること。
 麻雀本を読みあさっている人にとっては簡潔で喜ばしいばかりだが、戦術書第一冊目として手に取ると困惑するかもしれない。白ネマタ本などでターツ比較の基本が頭に入っている人向け。
 初学者は『基本形80』から購読すればいい。
 
 
 あと、難問が多いことも問題点。
 時には90点の打牌と100点の打牌を問うてくるだけの問題もある。
 300問の正答率を高めるより、基本的な問題を吸収していく方が実力向上につながる。
 
 
 
●ウザク本の読み方
 変に正解を意識したり、深く考えたりせず、「実戦なら いつもこのあたりを切っているな」と自分なりの答えを出してから解説を読むこと。
 題意を推察して回答を絞ることは当然できるが、出題者に媚びる必要はない。
「この辺りを切って広く受けるのが正解っぽいけど、自分はいつも端牌切ってタンヤオに走ってるなw」というふうな軽い気持ちで答えを出すべし。
 
 正解ならそれでいい。
 不正解なら、正解のロジックである100点の打牌を踏まえた上で、自分の打牌が何点相当であるかを考える。ロジックが根本から間違っているなら猛反省する。その繰り返し。
 打ち方全体のバランスや打ち手の力量も関係してくるので、最終的にウザク本の打牌を採用しなくても構わない。
 
 
 
 
 
 高打点をばんばんあがって脳内麻薬全開、絶好調、となれば1300円程度の出費を躊躇う必要はない。
 実用性の一点で比較するなら白ネマタ本や押し引き本より頭一つ抜きんでているので、騙されたと思って読んでみて。
 
 
 
 
 
 
 
 以下、個人的に好きな問題を引用する。
 必然的にネタバレになるので未読者は注意。
 
 
 
 
 
 
 
●Q230
 
 
 

 
 
 
 566m 234p 345p 68p 455s と5ブロックに分けて、
 ヘッドは間違いなく55sだが、では4s切るのかというと、そうではないというところが好き。
 余剰牌は持たないようにスリムに構えたいが、この4sを持っておけば愚形68pを縦引いたときにヘッドを交換して455sを45s両面として使えるようになる。
 この「愚形を縦引いて頭にする」スキルが大好き。うまくはまったときの快感が病みつきになる。
 「麻雀は最終形を決めず柔軟に打て」の法則ともいう。
 「余剰牌を持たずにスリムに打て」の法則と喧嘩になるので巡目や場況による見極めが肝心。
 
 赤ドラを使い切るために6m切って両面固定するのが正解。
 5ブロックそろっていなかったら7m引きによる中ぶくれへの発展を期待して6mは引っ張るけど、「ブロックが揃ったらドラ使い切りの両面固定」てロジックも好き。シンプルで分かりやすい。
 
 
 
 
 
●Q236
 
 
 

 
 
 
 テンパイだけを考えるなら打3p(6p)だが、それだと半分以上が愚形テンパイでものたりない。
 よって愚形ツモからの平和テンパイの目は残しつつ、ピンズが伸びたときの好形変化の目も残す打7sがオシャレという問題。
 こういう手がくると、打点は全然伴っていないのに、そのオシャレさで自己陶酔できて幸せになれる。*1
 
 平和を目指す雀士の道は自分のみがあがれればよいという修羅の道。全然平和ではない。
 
 こういう技術は二次有効牌というキーワードで語られる。
 受け入れ最大にとらないことでテンパイ速度はさがる。損をしているように感じられるが、実のところ和了巡目は変わらない。
 このロジックをはじめて聞く人は、ちょっと何言ってるか分からないと思う。
 
 テンパイ速度を高めても最終形が愚形ではツモるまでに時間がかかるか、ツモれずに終わる。つまり和了巡目が遅くなる。
 しかし二次有効牌を残し、好形変化を追えば、テンパイまでの速度は落ちる(イーシャンテンでいる時間が長くなる)が、テンパイしてから和了までの時間は愚形テンパイ時より速まる。
 
 麻雀の強さとテンパイ巡目の速さに相関がないのは、このロジックが関係している。
 強者は好形で押し返してくるから速さだけがすべてではない。
 
 
 
 
 
●Q215
 
 最後は、割りとショックを受けた問題。
 元ネタは『麻雀の正解』にある牌姿らしい。
 
 
 

 7mがドラで親番。
 是が非で和了りたいところ。
 
 
 
 5ブロックに分けると明らかに7pが浮いている。
 これは打7pしかない。
 ウザク本には「亜両面を切ればだいたい正解」の法則が出てくる。
 今回もそのケースだと思った。

 ただ、読み方の項目で示した通り、自分が実戦で何切ってきたかを考えて回答している。
 実戦の場でも7pを切るだろうか。
 1s落としてタンヤオにいきたいのが本音だが、さすがにタンヤオ病のそしりを免れ得ないので、ここは7pくっつきの好形変化の目だけを残して、3m切りあたりを切っちゃいそうかな、と考えた。

 こういういくつかの選択肢がある場合、ウザク本では条件を絞ってくる。
 たいていは「好形変化をみたいが親で、もう九巡目。ここは素直に受け入れ最大にとる」といった説明がなされる。
 問題を確認すると「親」で「9巡目」だった。ウケるw
 笑いながらページをめくると、答えは打3mだった。
 
 
 
 自分の実戦で打つであろう回答と合っていたが、納得がいかない。
 説明文には案の定、「もう9巡目」の記述はあったが、「受け入れ最大に」ではなく「好形の最終形だけを残しイーシャンテンを維持する」とある。
 技術としては先に紹介したQ236と同じなので分からなくないが、Q236は役なしテンパイを避けるためであって、今回はすでにドラ2あるので役はリーチで十分。
 なぜ「親で九巡目、受け入れ最大」の法則が適応されないのだろうか、と。
 
(元ネタの『麻雀の正解』は読んだことはないが、おそらく打7pを正解として説いているのだろう)
 
 ネマタ氏の解説も見てみたが、元ネタでは5巡目であること、そしてその巡目であるならタンヤオを見る打1sでもいいと書かれているだけ。
 
 ウザク本は画期的な何切る本だ。
 自分が親か子か、何巡目かといった情報まで加味したうえで正解を提示している。
 ひとことでいうと実戦的。
 つまりただの平面何切る本ではない。
 平面でありながら、かなり立体何切るに近い。
 そのあたりの価値観が解答にかなり影響しているように思う。
 
 実戦の場ではたいてい端牌が切られているわけで、1sも一枚は河に流れていておかしくはない。
 そうすると最終形はドラと一枚切れの1sのシャボとなるかもしれない。
 アガリ逃したくない高打点の待ちがこれでは心許ない。
 9巡目以降は追っかけリーチも増える。超愚形といってさしつかえない待ちでは好形が見込まれる追っかけリーチにめくり負けそうである。
 というか、むしろ先制をとられるケースを考えねばならない。このシャボでは追いかけられない。でも実際には追いかける。矛盾しているように思われるが、要するに、全ツ確定の手である。それならはじめから好形変化を残したい。
 くっつき牌をひとつ残すだけで早くなるかといえば、そんなことはないが、ピンズの複合系の食い延ばしやドラポンからのタンヤオ移行が機能する牌であるがゆえ打点向上&好形化につながる――ということなのだろう、多分。
 
 結局のところ、場況と相談することになる。
 ……うん?
 じゃあ場況無視の平面何切るなら打7pではないのか!?
 そんなこんなで、なにか釈然としないのであった。
 18回しかないツモで他人より早くテンパイし和了りきれというのが無茶な話で、他人の捨て牌を鳴いて利用していくのが麻雀なのだ、ということか。
 
 
 
 
 

*1:ただのナルシストである。