『嘘喰い』業の櫓の駆け引き考察

 
 理解できなかったので、理解の助けに個人的にまとめる。
 
賭郎勝負 [業の櫓]
賭郎会員 斑目貘(とマルコ)vs捨隈悟(と雹吾)
賭の対象 搦め手の功績(屋形越えの権利)と500億円
賭の場所 帝都タワー
勝利条件 帝都タワー最上階に設置された端末に2桁の正解パスワードを入力
       正解パスワードは対決する二者が掴んだ珠(1〜10個)の合計数(つまり02〜20番)
入力関連 パスワード入力は一人一回まで
       エラー3回でパスは無効(ゲーム終了)
暴力関連 1Fのみ暴力禁止
       1F以外での暴力は有効
補助装置 血の教誨師ドティの部屋(相手の珠の数を探ることができる)


[ドティの部屋について]
 タワー最上階で正解パスワードを入力したい。しかしパスワードが分からないのでドティの部屋である程度絞り込みをかけることになる。ところが、このドティの部屋は命懸け。相手に正解パスワードを当てられた場合、相手の血600mlを輸血させられる。コールの制限時間10分を過ぎた場合も100ml輸血される。勝負する斑目貘と捨隈悟は血液型が異なるため、輸血されれば命を落とす可能性が高い。
 ドティの部屋でははじめに先攻・後攻を決め、先攻が先に正解パスワードを入力する。ただし現実にあり得ない数値は入力できない。(仮に自分の手持ちの珠が9個だったなら、相手の珠が1〜10個のどれかなので、入力可能な数値は10〜19のどれか。)
 ドティ(機械人形)は正解パスワードを知っているため、入力された数値の正解・不正解を回答する。ドティの部屋で正解したとしても、最終的には最上階の端末に正解パスワードを入力しなければ勝ちにならない。


[パスワードの組み合わせについて]
 二名が1〜10個の珠を取りだし、その合計が正解のパスワードとなる。10×10=100で百通りの組み合わせが考えられる。そこにはもちろん重複する数値がある。(重複を省くと02番から20番までの19通り)
 

 ▲ 高校の数学で組み合わせのパターンを網羅する表を作った経験を思い出した。
 
 100ある組み合わせの中で多いのは10通りある11番。次が9通りある10番と12番、その次が8通りある09番と13番……以下略……。組み合わせ数の多い番号は、単純な確率の問題として的中率が高い。なおかつ手持ちの珠数の情報を相手に与えにくい。
 一名の取りうる珠数が最大10個、最低1個であることから、入力者の珠数は入力パスワードに対して±10以内の数しか取らない。(たとえば14を入力した場合、入力者の珠数は14±10個となり、少なくとも1〜3個ではないことが判明する)



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 以下ネタバレ。
 正解パスワードを明かしてから話を進めるので最大級のネタバレ。



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 正解パスワードから、賭郎勝負中の斑目貘と捨隈悟の駆け引きを考察する。
 ただ、どうしても舌足らずな文章になってしまう。
 この勝負の説明が込み入ってしまう理由は視点の多さにある。
斑目貘の視点」
斑目貘が考察する捨隈悟の視点」
「捨隈悟の視点」
「捨隈悟が考察する斑目貘の視点」
「第三者の視点」
 以上の五つの視点がある。対戦する二人はこの五つのうち四つを同時に考え比較検討していることになる。
 本エントリでは「斑目貘の視点」と「捨隈悟の視点」に注目する機会が多い。
 
 ちなみに、本エントリでは、パスワードは「02〜20」、珠数は漢数字「一〜十」で表記することとする。
 
 まず正解パスワードは18
 斑目貘が掴んだ珠は九個
 捨隈悟が掴んだ珠も九個
 
 多分、珠を掴むシチュエーションで、両者はすでにある程度はゲーム内容を推察できていたのだと思う。少なくとも珠数を当てるゲームという予想は立てたはず。そこでなるべく選択肢を増やすために珠を多めに獲ろうとする心理が働いたり、したのかなぁ……? (考察する気 無いな……)
 
 さて。
 物語をはじめから追ってみる。
 
<<< ドティの部屋1ターン目 >>> 

 斑目貘の言葉を信じるなら、この段階では彼はまだ自分の珠数を確認していない。
(単なるハッタリだったのかもしれないが、実際に確認していなかったとしても、珠を掴むときに珠の最大数が十個と聞かされていたのだから、だいたいどれぐらいの数を掴んだのか分かっているはず。二、三個じゃないということぐらいは分かってるはず)
斑目貘の珠数は「九」なので、彼の視点からは、正解パスワードは10〜19の十通り。)
 
 先攻の斑目貘は制限時間10分を使って会話による探りを入れた後、「11」を入力する。
 結果は、ハズレ。
(自分の珠数を確認していなかったとしても、11はあり得る数字。)
 
斑目貘の視点】
 11がハズレということは、「11−9=2」で、捨隈悟の珠数「二」は絶対にあり得ないことになる。
 
【捨隈悟の視点】
 逆に捨隈悟視点からすると、斑目貘の珠数「二」が絶対にあり得ないことになる。

 続いて1ターン目の後攻。
 捨隈悟のターン。「10」を入力。結果はハズレ。
 
斑目貘の視点】
 10がハズレということは、「10−9=1」で、捨隈悟の珠数「一」は絶対にあり得ないことになる。
 また、捨隈悟の珠数「十」もあり得ないと分かる。(捨隈悟の珠数が「十」ならば斑目貘の珠数が「零」になって矛盾するから)
 残る可能性は「三」「四」「五」「六」「七」「八」「九」
 
【捨隈悟の視点】
 捨隈悟視点からすると、斑目貘の珠数「一」が絶対にあり得ないと分かっただけ。
 残る可能性は「三」「四」「五」「六」「七」「八」「九」「十」
 
 捨隈悟の珠数は九個。斑目貘が先攻を取り、パスワード11番を宣言した。
 この時点で捨隈悟の中では計画が立っていたはず。自分の「九」を当てにくくするためには隣接する数字も含め可能性の中から消してしまう必要がある。つまり「八」「九」「十」のどれもハズレだと思わせたい。そのためにみずから10番を宣言することで珠数「十」を消した。そして後述のブラフで「九」と「八」も消そうとした。



 二人の1ターン目の最中、雹吾がエレベーターを使用不能にする。
 タワー最上階までの直通の手段が失われたことにより、暴力が有効とされているエリアが相対的に広まった。



<<< ドティの部屋1ターン目直後〜2ターン目開始前 >>>

 1ターン目終了の時点で捨隈悟は斑目貘の珠数を看過したと宣言する。
 純粋に数の理屈からすれば捨隈悟は相手の珠数から「一」と「二」を排除しただけだから、的中確率は1/8でしかない。
 よって、もし1/8以上に絞り込めているとすれば、ドティの部屋でのやりとりの中で何らかのヒントを掴んだことになる。もしくはただのハッタリ。
 もちろん、頭の悪い僕であっても、漫画の読者として俯瞰的な立ち位置にいるのだから、これがハッタリだということは分かる。漫画的に考えて。ただ、これがどういう意図のハッタリであるかが問題。
 
 このとき捨隈悟が雹吾に入力を促した数値は「08」。
 ……捨隈悟の珠数は「九」だから、「08」はあり得ない数値だ。
 あり得ない数値の入力は認められていない――ドティの部屋では。
 しかしタワー最上階の端末では認められている。ただし、絶対に外れるから、入力する意味がまったくない。
 逆にいえば、「まったく意味のないことをするはずがないから、捨隈悟は本気で「08」を入力させたのだ。つまり捨隈悟の珠数は一〜七のどれかだ。さらにいえば1ターン目で一と二の可能性もないから三〜七のどれかだ」と思わせることができる。というか、思わせたい。
 
 捨隈悟は雹吾に正解パスワードの入力を促し、最上階へ向かう。
 しかし斑目貘は読者と同じで捨隈悟がハッタリをいっている可能性が高いと分かっている。しかし確証はないので、確証を得るために捨隈悟のあとへついていった。もし捨隈悟がハッタリを言っているのであれば、ドティ2ターン目を行う前提でいるということであり、命を落とす可能性のある暴力有効エリアに踏み込んだとしても命を落とすことなくドティの部屋まで帰還できるはず。反対に、捨隈悟がハッタリではなく正解パスワードを確信しているのならば斑目貘を殺してしまうことが最も合理的だ。
 つまり、斑目貘は、生還できれば捨隈悟の宣言はハッタリ、生還できなければハッタリではなかったのだ、という賭に出た。
 いわば命を賭けた半丁博打。
 しかしその結果、斑目貘は捨隈悟の正真正銘の殺意を目の当たりにすることとなる。斑目貘はあとの成り行きで結果的には生還できたが、これでは半が出たのか丁が出たのかは分からない。分からないというか、捨隈悟がハッタリを言っていなかったのではないか、と見るのが妥当ということになる。
 
 だが、斑目貘は2ターン目のドティの部屋に戻る前に――マルコと合流して話し合っている最中に――ふと自分の台詞から気付きを得る。
 該当の台詞→「お互い丸腰なのは分かっていたし、あの近くに俺を一瞬で殺せるような物が無いことも分かっていた」
 お互いに分かっていた。斑目貘が分かっていたように、捨隈悟も分かっていた。ところで、あのとき本当に「一瞬で殺せるような物が無」かったのだろうか?
 斑目貘はライフルの狙撃があった可能性に気付く。
「捨隈悟はライフルの狙撃に気付き、斑目貘が死んでしまう可能性を考えたのではないか、斑目貘が狙撃されて死んでしまい、ドティの部屋2ターン目が行えないぐらいなら、本気の殺意を見せつけ暴力を振るい続ける方がまだ斑目貘を生かしておける公算が高いのではないか」
 と、考えるなら、捨隈悟は2ターン目を必要としていたことになり、先の雹吾に入力を促した数値はブラフ……。
 
 
 
<<<  2ターン目前に少し情報を整理する。 >>> 

斑目貘の視点】
 捨隈悟の珠数は「三」「四」「五」「六」「七」「八」「九」のどれか。
 マルコは雹吾のエラーパスを見ていたが、入力された数値である08は覚えていなかったので斑目貘も知らない。
 
 仮にエラーパスが判明していた場合――
 雹吾に命じた入力がホンキの場合は「三」「四」「五」「六」「七」のどれか。
 雹吾に命じた入力がブラフの場合は(ブラフの目的にもよるが普通に考えて)「八」「九」のどちらか。「九」の方がくさい。
 
 が、知らないものは知らない。仕方がない!
 しかし知る方法はある。敵から教えてもらえばいい。
 マルコが敵側にレオがついていることを知っている。レオが鞍馬蘭子の配下だということも斑目貘は知っている。更に、事前に見ていた捨隈悟vs梟のポーカー勝負から、アイデアルが捨隈悟の背後にいる可能性があることにも気がついている。
 もし捨隈悟が鞍馬蘭子と完全に結託しているなら、エラーパスを聞きにいっても教えてもらえない。が、もし捨隈悟が鞍馬蘭子を隠れ蓑にアイデアルと通じているなら、その事実を暴露することによって雹吾らからエラーパスを聞き出せるかも知れない。
 「かも知れない」ばっかりだ! なんという綱渡り。
 
【捨隈悟の視点】
 斑目貘の珠数は「三」「四」「五」「六」「七」「八」「九」「十」のどれか。
 まったく絞り込めてない! が、ブラフが成功しているならかなり優位。というか、この時点では捨隈悟は斑目貘がエラーパスを知ったと思い込んでおり、「五」が正解だと思わせる計画でいた。
 また、上層の無法地帯ではアイデアルが鞍馬組を駆逐しようと行動に移している頃だ、と考えていたはず。
 
 
 
<<< ドティの部屋2ターン目 >>>

 ドティの部屋2ターン目。
 斑目貘は人並み外れたその洞察力をもって捨隈悟の内面を推し量ろうとする。が、制限時間を目一杯使っても捨隈悟の内面は読み取れなかった。
 このとき斑目貘は、事前に見ていたVTR「捨隈悟vs梟のポーカー勝負」と共通する違和感を覚える。このことで捨隈悟の背後にはアイデアルが噛んでおり、鞍馬組は隠れ蓑にすぎず、エラーパスを聞き出せる公算が高い、と見なした。この「見なし」は2ターン目開始前からのものであるが、2ターン目の最中のやりとりで信じるに価する直感だと信じた。(他に手もないから、鞍馬組を仲間に引き込むしかない)
 
 エラーパスを聞き出せるとするなら、聞き出してからが本番なので、斑目貘はまだ安全牌を切る。
 「11」番、「10」番ときて、この二ターン目、斑目貘は「12」番を入力する。12番は10番と同程度の安全牌。
 
斑目貘の視点】
 「12−9=3」なので捨隈悟の珠数から「三」が除外される。
 残る可能性は「四」「五」「六」「七」「八」「九」のどれか。
 
【捨隈悟の視点】
 同じ理屈で、斑目貘の珠数から「三」が除外される。
 外野は、捨隈悟の取りうる最大値が十個、斑目貘の取りうる最小値が一個であることから、斑目貘の珠数「一」の可能性が消えたと騒いでいるが、自分の珠数を知っている捨隈悟にしてみれば1ターン目に分かっていたことである。
 また、外野はエラーパスがブラフだと気付いていないため、捨隈悟が更に珠数を絞り込めていると思い込んでいる。(1/4まで絞り込めていると思われている)
 が、実際のところ、捨隈悟にとって、残る可能性は「四」「五」「六」「七」「八」「九」「十」のどれか。
 
 「08」ブラフ有効だと考える捨隈悟にとって、斑目貘の「12」コールは、捨隈悟の珠数が七個以下だと見なした上での決断であると見なせる。
 七個以下、つまり……
 12−7=5
 12−6=4
 12−5=3
 12−4=2
 
(↑ コメント欄で指摘があったのですが引き算を間違えて……
   いや間違えるというかなんというか、きっといろいろ何か理由があったんだきっとあったんだうん……
 とにかく「12」コールに対し七、六、五、四個を引いて得られる個数である五、六、七、八個が捨隈的にクサイよねという場面ね。ただしエラーパス「08」から八個のパターンは除外する)
 
 
 ……斑目貘の珠数は五〜二個の四通りだと、捨隈悟は考える。
 ……っと。すでに「二」と「三」も消えていたのだったか。

 (上記の計算を誤っていたので、ここも訂正。正しくは「斑目貘の珠数は五、六、七個の三通りだと、捨隈悟は考える。」という場面)
 
 ならば自分の本当の珠数九個に「五」か「四」「五」か「六」か「七」を足した数が正解パスワードだと思われる。
 仮に五個にヤマをはった場合、「9+5=14」なので「14」をコールすることになる。当たればそれでいい。斑目貘は輸血されて死ぬだろう。外れたなら四個が正解だったのだと判明する残る可能性は六個と七個である。
 
 後攻の捨隈悟は「14」番を入力。ハズレ。
 
斑目貘の視点】
 「14−9=5」なので捨隈悟の珠数から「五」が除外される。
 「14」入力によって捨隈悟の珠数から一〜三個の可能性も消えたが、斑目貘にとって、それはもとから判明している情報である。
 残る可能性は「四」「六」「七」「八」「九」のどれか。

【捨隈悟の視点】
 同じ理屈で、斑目貘の珠数から「五」が除外される。
 残る可能性は「四」「六」「七」「八」「九」「十」
 というか、「08」ブラフ有効だと考える捨隈悟は、正解パスワードが自分の九個に、先ほど確定した四個六もしくは七個を足した「13」「15」か「16」に決定したはずである。
 しかし、2ターン目が終了して、彼は斑目貘がエラーパスを知らないことに気付く。
 
 
 
<<< ドティの部屋3ターン目 >>>
 
 開始直前、鞍馬組からエラーパスを聞き出すことに成功したマルコが斑目貘にエラーパスを告げる。
 エラーパスは「08」
 斑目貘はマルコへと最上階端末に「13」を入力するように命じる。(実際には入力しないように事前に打ち合わせしてある)
 扉は閉じられ、ドティ3ターン目が始まる。
 
 斑目貘は捨隈悟の本当の珠数が八個か九個であることを知っている。ブラフだと見抜いたから。八個ならば正解パスワードは17、九個ならば正解パスワードは18である。だがドティでこれを入力すれば、ブラフをブラフだと見抜いたと告白するようなものだし、かならずどちらかが死ぬ二分の一の賭になってしまう。(目を怪我して入力権を失っていなかったなら、最上階の端末に向かい、マルコと斑目貘で17、18を入力することもできたのだが……*1
 そこで、斑目貘はブラフを信じたふりをして、入力ナンバーを絞る。つまり外れる前提である。
 先に述べたが、《雹吾に命じた入力がブラフでない場合 残る可能性は「三」「四」「五」「六」「七」》である。そこから2ターン目の入力によって「三」が除外されている。(「五」も除外されるが、これは斑目貘の視点だからこそ分かることなので、第三者には分からない。よって、捨隈悟にブラフを噛ますためには「五」も有効な珠数)
 「四」「五」「六」「七」のどれか。この四通りのうち、どれを選ぶことが有効だろうか? 捨隈悟にニセの個数を信じさせるためにはどれが有効か? 真実味があるのは? 矛盾がないのは?
 ここに第三者にも判明している情報を加味すると、「四」か「五」に見せかける場合は「09」コール。「六」か「七」に見せかける場合は「13」コール。この二種類しかない。さて、どちらで嘘をつくべきか? (本当は第三者視点を鑑みると「15〜19」コールも視野に入れることができるが、正解の九個を含む組み合わせになってしまうのでリスキー)。
 まず「09」コールをする場合のリスクを考えてみる。

 斑目貘は捨隈悟の本当の珠数が八個か九個と見なしている。もし九個ならば、斑目貘がそうしたように、捨隈悟の視点からも「五」が除外されているはず。この場合、先攻で「09」をコールすることは、「四」か「五」に見せかける行為ではなくて斑目貘の珠数を「四」に見せかける行為となってしまう。となれば、捨隈悟は後攻の入力でそれを必ず確認してくる(捨隈悟は自分の珠数が九個だとバレても問題ない。なぜなら嘘喰いチームは入力権を使い果たしているはずだから)。この場合、捨隈悟が「9+4=13」で13をコールし、ドティがハズレを表明するため、嘘がばれる。
(↑ コメント欄で指摘があったのですが、嘘喰いの珠数が九個なので嘘喰いは09コールできないルールでした。)
 だが先攻の斑目貘が「13」をコールするならば、「六」か「七」か断定できない。
 
 斑目貘は「13」をコール。ハズレ。
 
斑目貘の視点】
 ハズレることが前提の13コール。
 「13−9=4」で「四」もなくなった。
 残る可能性は「六」「七」「八」「九」のどれか。ていうか斑目貘は「八」か「九」と推理している。
 
【捨隈悟の視点】
 「四」排除により、残る可能性は「六」「七」「八」「九」「十」
 しかし、捨隈悟は斑目貘の珠数を「六」か「七」に断定する。
 なぜなら、斑目貘がドティでも最上階端末でも「13」をコールしたから。
 斑目貘が13が絶対に的中すると確信していたのならば、彼の珠数は「六」か「七」の他にない。二分の一の確率。
 捨隈悟は「六」にヤマを張った。
 すなわち、9+6で「15」をコール。
 ハズレ。
 これで「七」に確定。
 正解パスワードは9+7で「16」……
 捨隈悟はそう信じて最上階へ向かう。
 
斑目貘の視点】
 「15−9=6」で「六」除外。
 残る可能性は「七」「八」「九」のどれか。
 
 エラーパス08がブラフならば、捨隈悟の珠数は「八」か「九」
 3ターン目後攻、捨隈悟のコールは「15」だった。
 捨隈悟が八個か九個で、なおかつ斑目貘の珠数を六個か七個のどちらかだと見なしているなら、「捨隈悟+斑目貘」の組み合わせは以下の四通り……
 8+6=14
 8+7=15
 9+6=15
 9+7=16
 ……で、「15」コールハズレの結果から「8+7=15」と「9+6=15」を除外する。また、2ターン目後攻で「14」コールハズレも確定しているから「8+6=14」も無い。
 残るは「9+7=16」となる。斑目貘はここでようやく捨隈悟が九個の珠を持っていることを断定できた。
 
 しかし斑目貘は、血を抜かれて体力的に消耗しているし、上層の状況がさっぱりつかめていないので、捨隈悟を追い越してマルコと合流しパス入力☆とはいかない。捨隈悟が最上階端末で「16」を入力し、エラーを出すのを見届けるしかなかった。というか、思わぬ伏兵が潜んでいないとも限らない無法地帯であるから、非力な斑目貘は立ち入らない方が賢明だ。ヘリでタワー最上階を目視し、館内放送でマルコと連絡を取り合ったのもそのためか。
 
 
 
 
 それにしても、捨隈悟の「08」ブラフに対し、斑目貘の珠数が九個ってのは、捨隈悟にとって残念だな。雹吾の08入力を知った時点で斑目貘にとってはブラフ確定だ。自分の珠数「九」を隠すためのブラフだから「09」コールでもよかったのかもしれないが、そうすると、ブラフバレした瞬間に珠数が九個に絞り込まれてしまうから、九個か八個の二通りがある「08」コールにした……ということなのか? どちらにせよ、はじめから詰んでたな。詰んでたけど、はじめから鞍馬組と組んでいれば勝てたのになぁ……。
 逆に、鞍馬組もアイデアルも「暴」を忍び込ませることに成功していたというのに、斑目貘はマルコ以外に「暴」の駒がないから、隠し球が使えない状況だったんだな。通常、賭郎勝負は部外者が助太刀できない環境になるが、今回は時間がおしていたので「タワー内部の調査が不十分」=「予め忍び込ませていた駒を使ってもいいという暗黙のルール」があったわけで、斑目貘は当然これを予想していただろうから、伽羅がいればタワーに忍び込ませていただろうに。


 というところか。
 何が起きていたのか、今、やっと分かった。

*1:実際には、これはよい策ではない。鞍馬組を十分に引き込めていない段階だったし、アイデアルが邪魔をしてくる可能性もあった。だからこそのドティ選択。