スピッツ・ベスト10

このエントリのOP曲として

 あわてないできいてね、あわだけに。(←脳みそババロア

 
 スピッツが好きだー!
 大好きだー!
 と、叫びたい夜がある。夜だけでなく、朝も、昼も、叫びたいときは叫びたい。
 
 
 
 時間泥棒のWikipediaスピッツの項目を読み繋いでいると、こんな記述を見付けた。

ウサギのバイク (3:28)
作詞・作曲:草野正宗 / 編曲:スピッツ
アルペジオで始まるイントロが印象的。1番は“ラララ…”、“TuTuTu…”とスキャットのみで歌っている。草野自身も気に入っている曲であり、「自分の好きな曲ベスト10には絶対入る」と語るほど。

 マサムネがいつそんなことを話したのか知らないが、今でもまだウサギのバイクはベスト10入りなのだろうか、と考えた次に私自身のスピッツベスト10が気になった。トゲトゲの木ぐらい気になる。どの曲だっていい曲だけど、断腸の思いでトップ10を選んでみる。順位をつけるなんてとてもできないが、その不可能に挑みたくなった。
 
 それでは十曲、いってみよう。
 
 
 

仲良し


「いっつも仲良しでいいよねって言われて、でもどこかブルーになってた。あれは恋だった」
 友達として仲がよくなればなるほど、その親友が恋人に転じることが難しくなる。なぜだろう。親友の方が恋人よりも得難いから? 相手の人格に好意を寄せれば寄せるほどフェティッシュの対象にしてしまうことを躊躇うから? 分からない。分からないけど、賞賛されているはずの他人の言葉――君たちさ、いつも仲良しでいいよね――にブルーになる。ブルーになってしまうわけも、言葉にできるほど確かに自覚できているわけではない。でも、そうだ、今思えば、あれは恋だったんだ。
 「サンダル履きの足指に見とれた」 で す よ ね っ !
 ですよね、と力強く頷きたくなる歌詞がスピッツには多い。「君の耳と鼻の形が愛しい」とか。「この街で俺以外 君の可愛さを知らない」とか。
 
 
 

惑星のかけら


 スピッツを好きだといっても、アルバムを買ってはじめて聴くときは、しばしば「?」となる。恐ろしいほど退屈で、なんてことない、という気分になる。他のアーティストでこんな体験をしたことはない。この点はスピッツ好きの妹*1と見解が一致している。シングルでヒットを飛ばしている曲はキャッチーのが多いので一発で馴染むが、そうじゃない曲はたいてい琴線に触れない。戸惑い狼狽えそうなほどに。ところが何度も聴いていると(退屈だと思った曲を、なぜ、何度も聴いてしまうのかも不思議だ)、あるとき好きになっている。『惑星のかけら』は同じタイトルのアルバムに収録されていて、このアルバムだと『僕の天使マリ』とか『アパート』は一発で気に入るのだが、『惑星のかけら』となると首をかしげてしまう。それが、今ではマリやアパートよりも好きというのだから分からない。耳に馴染むというレベルを超えている。知らなかった言語を操れるようになっていくレベル。
 『惑星(ほし)のかけら』は一言でいうと落ち着くヘビメタ。だらけることに罪悪感すら覚えてしまう多忙な生活に慣らされた肉体と精神も、これさえ聞けば大丈夫。何時間ぼけーっと聴いていてもスピッツがゆるしてくれる。
 
 
 

ミーコとギター


 『僕のギター』とどちらにしようか悩みに悩んだ。タイトルがギター繋がりというだけでこの二曲は天秤にかけられてしまった(笑)。「小さなことが大きな光になってくように」と歌う『僕のギター』がいい、いい、と思いながら、ミーコを聴くと最後の最後に裁定が覆る。「手垢まみれのギターと今日も」頑張る架空の少女ミーコが想像され、間奏で炸裂するギターにやられる。
 スピッツの曲のタイトルは虫も多いが女の子の名前も多い。ミーコ、ナナ、マリ、テイタム・オニール……あれ、そんなに多くもないか。
 
 
 

海とピンク


 エロい、エロい。『ラズベリー』とどっちがエロい? 天秤にかけると苦しいからやめておく。ただ、こっちの方があっさりしてる。『ラズベリー』は想像力と妄想力、欲望へ向かって駆ける歌、どろどろの夢の中を疾走しているよう。『海とピンク』は具体的な行為と風景が描かれているから直接的。でもカラッとしている。絡み合う二人を通り過ぎる浜辺の熱風みたい(あれ、それってカラッとしてないんじゃ……? まとわりつくようなねっとりとしたところと潮の突き放すような強さを持ったところのある風じゃない……?)。
 
 
 

8823


 読みはハヤブサ。カラオケで歌い出しのタイミングを必ず失敗する。くやしい。(←どうでもいい話)
 あなたを幸せにします、というとプロポーズの言葉だが、マサムネが社会的に承認される安直な歌詞を持ち出すはずがない。「君を不幸にできるのは宇宙でただ一人だけ」ときたもんだ。愛の国「ガンダーラじゃなくていいよ」ときたもんだ。ていうか愛じゃないよLOVEだよLOVE、LOVEと絶望の果てに届け!
 
 
 

たまご


 指切りげんまん、嘘付いたら針千本呑ます。男女はなんの秘密をつくったのか。ところで、スピッツの歌詞って、たいていは解釈しようとすれば卑猥に解釈できてしまう。『たまご』はエロく解釈して正解なの? 見当違いなのか? 「バナナ浮かぶ夜」って、三日月の夜空のことだろうが、バナナとくると男性性器の隠喩と見なしても妥当すぎてお釣りが来るはずだし、「下手なピンボール」も性的な隠喩だろう、ピンボールというと玉を射出するわけで。玉が精子か睾丸かは知らないけど。フリップ(ピンボールの球を打ち返すバー)のぱたぱたする感じも、そこに宿る反復される動作という意味も含めて性交の隠喩かと思えるし。で、そこんところを分かんない、分かんないと悩んでおきながら、タイトルの「たまご」については悩まない。考えずとも感じ取れてしまう。
 
 
 

トンガリ’95


 メンバー曰く、スピッツのテーマソング。

トンガリ'95 (3:04)
作詞・作曲:草野正宗 / 編曲:笹路正徳スピッツ
スピッツはドイツ語で「とがっている」という意味であり、この曲はメンバー曰く「スピッツのテーマソング」。サビの歌詞は「とがっている」の連呼である。始めはテンポも倍の速さであった。仮タイトルは「トンガリユース」。

 歌詞については、考えるんじゃない、感じるんだ、の一言。語彙がまさしくスピッツ。頭の天辺から爪先まで痺れちゃいます。
 そうそう、テーマといえば『ミカンズのテーマ』、ウィキペディアによると《もしも新しくバンド名をつけるとしたら、という発想のもとで架空のバンド、「ミカンズ」を設定して作ったという曲》だそうで。比べてみるのも面白い。
 
 
 

ハチミツ


 『運命の人』の「バスの揺れ方で人生の意味が分かった日曜日」という歌い出しもすごいけど、『ハチミツ』の「一人空しくビスケットの湿気ってる日々を経て」もすごい。どえらいすごい。略してどすこい。はじめっから最後までスピッツしてる。
 この曲はアニメ『ハチミツとクローバー』の第1期第1話挿入歌として使用されていた。そんなこと知らんかったよWikipediaやい。実写版映画『ハチミツとクローバー』の主題歌としてスピッツの『魔法のコトバ』が書き下ろされたことは知っていたけど。『君は太陽』もフルCGのアニメ映画「ホッタラケの島〜遥と魔法の鏡〜」の主題歌として起用されている。アニメといえば、『あわ』の冒頭もアニメでかかっていても違和感のなさそうな曲。
 
 
 

タイムトラベラー


 ストーリーある歌詞。これを題材に小説書こうと思い立って十年経っちまってやんの(笑)。十年後だって同じこといってカッコ笑いをつけてるはず。そんなこといったら『仲良し』や『田舎の生活』もネタにしようとして一筆もしとらんけど。書こうとすれば『タイムトラベラー』が一番難しいだろう。話の骨子ができているかわりに「飛び交う鳩さえ卵の中にかえっていく」みたいな文章がひねりだせるかどうかというところで躓く。
 
 
 

正夢


 選考を後回しにした『田舎の生活』と『ウサギのバイク』と『ハイファイ・ローファイ』のどれを選ぼうかと頭を痛めつけた。ベスト10と宣言しておきながら一曲や二曲ぐらいオーバーしてもお約束じゃん、と思ったものの、聴いた回数が最も多い『ハイファイ・ローファイ』に決定。全曲中の聴いた数であれば『君が思い出になる前に』と『バニーガール』が一番かもしれないが。ああそうか『バニーガール』もいいな。でもそれなら『けもの道』だって捨てられない。まっとうにPOP路線から選んでもいいような気もする、『ロビンソン』や『ホタル』で。いや待て『波のり』はどうなる。どうにも決められない。どうにも決めがたい。でももうそんなことはいいのさ〜、むか〜えにゆくから〜、どうか待ってて僕のこと子犬みたいに〜、晴れた日の波乗りは愉快だな〜♪ て、投げ出してどうする。でも『波のり』は百回聴いても飽きないだろうしなあ。飽きないと言えば『稲穂』もいいなあ、ビールが飲みたくなる曲だしなあ。そんなこといったら『ジュテーム?』だってスープを飲みたくなる曲だし(←なにそれ)。どちらも新しめの曲なのに懐かしさを覚える曲だ。懐かしいと言えばアルバム『花鳥風月』も懐かしい匂いでいっぱいだ、『俺のすべて』『コスモス』どれも捨てがたい。同じく『スピカ』も捨てがたい。これ椎名林檎がカヴァーしてたよね。パフィーが歌って有名にした『愛のしるし』もいいし「ヤワなハートが痺れるのヤワなハートってなあに?」と妹*2に訊かれたこともいい思い出だし、どうすんの、ねえ、どうすんの、収拾つかないよこれ? 一応、百回聴いても苦痛じゃないことを選考基準にしてきたけど、そのルールもう限界。
 そんなもどかしさをすぱっと切り捨てて『正夢』なのは、どこかしら堅実だから。休日の早朝に商店街をランニングすればそこの空気は『正夢』を含んでいる。自転車でこぎ出す春の田舎道の匂いがなぜか香るこの曲は、かかった瞬間から聞き流しモードに入るほど聴いてしまって、気が付いたら終わってる。だからもう一回再生するんだ。
 
 
 

このエントリのED曲として

 当エントリのED曲はセルフサービスとなっております。各自別ウインドウを手動で開いた上で引き続きネットのクルージングをお楽しみ下さい。

 今日のところはこのくらいで勘弁してやる。
 十年後にまた会おう。

*1:妹a

*2:妹b