諸君、私は筋肉が好きだ
最近、多くのサイトで『鉄風』という漫画のレビューをよく見かけました。総合格闘技を取り扱った女子格闘漫画です。
私が見てきたレビューはどれも同じ調子で同じ特徴を語っていました。本来ならライバル役に起用するであろう性格の登場人物を主人公に起用している点が特に絶賛されていました。
格闘漫画好きとしては見過ごせないレベルの作品のようだと思い、読んでみたのですが、レビューで受けた印象と実際に読んでみた印象が面白いほど違ったので、遅ればせながらこの漫画に言及したいと思います。
鉄風 1 (アフタヌーンKC)
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おすすめ度の平均: 






私が見てきたレビューに嘘偽りがあったかといえば、そんなことはなかったのですが、よくよく考えてみると格闘漫画としての面白味について触れている文面が圧倒的に少なかったように思います。もっといえば、この漫画が総合格闘技の面白味に触れようとしている漫画だという話を見かけなかったような気もします。一、二巻が同時発売されていたのですが、私が一番楽しめたのは二巻目、ジムで総合格闘技を習い始めた主人公の、いかにも基礎的な練習風景でした。エビや逆エビは柔道漫画でお馴染みだったのですが、飛びつきクロスとかそこからマウントに引きずり込む反復練習とかタックルの練習風景は他の漫画で読んだことがなかったので新鮮でした*1。漫画でなくても入門書をひもとけば図解されているのでしょうが、やっぱり、漫画で見てみたいんです。あと主人公の内心独白「何てゆうか……アップが長くないか……?」や「空手と違って……本当……人と触れ合う時間が長いなぁ……」が雰囲気を分かりやすくしていました。
柔道漫画でもなければ寝技の応酬や駆け引きなんて滅多にお目にかかれないもので、私個人の貧弱な読書経験では『修羅の門』の陸奥vsレオン戦が最高峰といったところです*2。『鉄風』がいずれ、それを越えるような名勝負を描いてくれれば個人的には御の字です。
で、二巻までの『鉄風』にまだ一度しかでていない寝技の駆け引きのある場面*3なんですが――ちょっとここいらで話を別方面に移したいと思います。タイトルにあるようなことです。筋肉のことです。
よく「今のジャンプには筋肉が足りない」なんて揶揄を聞くわけですが*4ジャンプに限らずたいていの漫画では筋肉が足りていません。じゃあバキを読めという話になるのかも知れませんが、もっとナチュラルな筋肉を見てみたいじゃないですか。もっと正直にいうなら、「女の」と頭につけないといけません。
やっ、べ、別にセクシュアルな意味じゃないんですよっ、ただね、運動神経抜群のヒロインの体格とかがどの漫画でも判を押したように同じじゃ萌えも枯れ果てるわバカァ、胸に付いてる脂肪が果実みたいじゃ動きにくいだろうがバカァ、激しく動いたら痛い思いをするかもしれないじゃないかバカァ、ボクはそんなじゃ喜べないんだい、というね、あのね……

ともかく、要は論理的かどうかってことですよ、身体は子供で頭脳が大人の探偵が出てくる某探偵漫画でいえば、主人公がサッカー少年にしては足細くね? と思うしヒロインが空手チャンプっつっても空手家の体格してなくね? て思うしね、色黒の関西弁のお兄ちゃんも剣道強いけど腕の太さとか胸板の厚さとかどうなのかなって思うわけでね、つまりはそういうことで、別に全ての漫画にそんなこと求めやしないけど、じゃあボクの鬱憤はどこで晴らせばいいの、いやそりゃ男のナチュラルな筋肉を拝める漫画は結構あるかもしれないけど女のナチュラルな筋肉はどこで拝めるの、いい漫画教えてってことでね、『鉄風』はそんな漫画かも知れないよ、ということ。

ナチュラルというと語弊がある。肉は鍛えなきゃ手に入らない。
肩幅と背中のボリュームがポイント。やや猫背気味の姿勢とはいえこのアングルで背中が見えるところがグー。
打撃系と寝技系で筋肉の付き方は違って当然で、その辺りの描き分けをしてくれているだけで私は満足できます(そんなに高い水準じゃないでしょう、漫画家さん?)。
というわけで、女子格闘家の筋肉の描かれている漫画として推しておきます。
鉄風 2 (アフタヌーンKC)
posted with amazlet at 10.04.12
別にボクは筋肉フェチとかじゃないですからね、筋肉の名前とか知りませんしね、ただ二の腕の筋肉は好きですけどね、男女問わず。
あ、そういえば、主人公が兄貴と上手く接することができずに困っている妹萌え漫画という趣旨でのレビューも見たことないですね。探したこともないですが。