はてな放浪記、読み物を求めて
はじめに
私は脳髄の空腹を満たしてくれるような美味しい文章に出逢ったとき、ブックマークで「読み物」のタグをふってとっておくのですが、気が付けば「読み物」タグをふった記事は百を軽く越えてしまっていました。
はじめの頃こそ「読み物」タグのなかでも階級付けを行うつもりがあったのですが、そもそも高い階級にヒットしていなければ「読み物」タグをふってないことに気づきました。おかげでまとめにくい。どうやってまとめればいいのやら。
いつかまとめようと思っていながら、一年経ったときに何もせず、ブクマ数100を超えたときにも何もせず、このまま放っておいたら永久にまとめないような気がして、荒っぽいながら強引にまとめてしまいたいと思います。
もしもし
はてなに住まうマダムはなぜ面白いものを書けるのでしょう? エロワード連発なのに清々しいのはなぜでしょう?
もしもし亀よ、亀さんよ、と歌えば、あらやだエロい。日常のあらゆる言葉の裏に潜むあらやだエロいへ一足飛びに近寄ってはピュッと弾んで飛んでいく、そんな妙文ブログ。それなのに締めるところはきちっと締めるから気持ちよくなれちゃうんです。マジでいけますよ?
哀愁デート - もしもし
会話の連続は本来単調になりがちなのですが、相手の発話を鉤括弧に収め、語り手の発話を地の文に溶かしておくと容易に雰囲気が出せます。しかし、こうまで情景が目に浮かぶのはなぜでしょうか、情景が目に浮かびすぎて、書き出しでは省かれているデート相手の正体が明かされるまでに予想が付いてしまうところもお見事です。長いセンテンスに短いセンテンスをまぶす基本もばっちりで、その短いセンテンスというのも《注目の的(赤面)。》の体言止めや《ありがとう天使さん。》のぽろっとこぼれた感謝だったりしてセンスが光ります。
2月のイカとアレブリヘス擬きの魚群 - もしもし
僕というと一人称なのに、ここで使われている僕が三人称だというところが凄く面白い。語る私と語られる私の問題や書き手と登場人物の距離感について考えさせてくれます。ビュトールが『心変わり』において主人公を語るのに君(二人称)を用いた事実が思い出されます。と、いったって、母親が息子のことを「僕ちゃん」と三人称で呼ぶことは何ら不思議なことじゃないんですが、ここは有り難がっておきましょう、こいつは世紀の大発明だィヤッホーさすがはhonyami先生!!! 僕から私へ切り替わるところに違和感がないのもすごいです。え、写真のせい? さあ、どうでしょうね。
※honyamiさんを知らない人はリンク先のブログの一番下にある過去記事のリストを手繰って稲妻に打たれましょう。この地上には愛すべき事が実に多い、急げ - もしもし なんて凄いですよ、一発で恋に落ちます。
G.A.W
ここが面白いのはコンビニ店長+変態というキャラが立っているからだと著者自らが分析していたが、いやはやまったくその通り。しかし読んでいて心地よい理由は、ここにあるのが吐き出されたものだからか。口から出てきた嘔吐物か尻から出てきた排泄物かは知らないが、ダラダラ綴ってしまうところに同じ電波を感じてしまう。ていうか語彙とか思考の呼吸がまんま自分と同じだわあ。
物語に取り残された日 - G.A.W.
ここのブログを初めてブクマしたのだと思う。まだ得体の知れないid:nakamurabashiさんを警戒していたような気がする(笑)。今回のまとめをやっていて、追記でブコメに答えてくれていることに気づいた。
フェミニズムそんなんじゃねえって! - G.A.W.
男であることを原罪のように受け止めるものにとってもフェミニズムは実質的な救済である。これは一種の魂の悲鳴なのだ。
現代文の授業とかなんのためにあるのかわかんね - G.A.W.
ここにあるのと同じ主張をもっている人が大勢いるような気がする、そんな特に奇抜であるわけでもない主張だが、改めてこうして文章に落とされたところを見ると何かしら感慨深い気分になるのは私だけでしょうか。そして予想可能な範囲内での賛否両論が舞うところまで含め、やはりうたた深い感慨を禁じ得ない。
「女子力を上げたい」とその子は言った - G.A.W.
コンビニ店長の相談事務所。女子力編。
三等兵
はてなの人じゃないですよ。Web漫画描いてる人です。エントリ読んで性格や嗜好を知った後にWeb漫画読むとニヤニヤできる。オタク的共感てやつですか。
痒いところに手が届く、そんな批評や分析がネガティブに展開される。が、とりあえず「読み物」タグをつけたのは物語チックなものだけ。
3ToheiLog: 裸でなかった王様
二転、三転する裸の王様。寓意がやがて空中分解して、人間でいることが気まずい、という気になる。
3ToheiLog: 社会派コント:職業選択の自由アハハン(格差編)
面白いのに笑ってばかりいられないところが怖い。世の中無駄で回っているといったって、ねえ?
3ToheiLog: ドラえもんのソリューション
読み物タグふってなかったけど、似たようなやつなので貼っておきます。ドラネタ。
ねこの森に帰る
佐々木あららさんを御存知でしょうか? 星野しずるは? 犬猿短歌は? 知らない人は調べて下さい。知っている人は、犬猿短歌が「けんえんたんか」ではなくて「いぬざるたんか」だって知ってましたか? あ、知ってましたか、そうですか。いえ私も知ってましたが、それがなにか?(どーん)
何かと個性的なネタの多いブログですが、たまに小説を書いています。小説と呼んでいいのか分からない短さですが、当人が小説というのですからきっと小説なんです。敬虔なあらら信者の私はそう思います。(「佐々木せんせいのゆうことはー?」「ぜったーい!」)
王様と床屋とその妻 - ねこの森に帰る
一部を引用しますと、《余が構ってほしいのはそこじゃない。あと、余の名字は増田じゃない。》
もう読みたくなりましたよね?
小説:ガンダムで例える - ねこの森に帰る
ガンダムで例える男! いかにもネタっぽい話なのですが、id:kobeni_08さんのブコメがセカンドインパクト。
これ、うちのダンナじゃん。
こういう人実在するんだ、と思い知りました。世界が一つ丸く、柔らかくなりましたよ、id:zanbottosanさん。
Everything You’ve Ever Dreamed
知らない人なんていないくらいの有名人だから紹介なんてしませんよ。言わずと知れたid:Delete_Allさんのブログです。現代の言葉で何かを語るって言うのはこういうスタイルなのかもしれません。
内容や文体の呼吸でいくつかに分類することができるのですが、ここではすごーくおおざっぱーに「初期」「キャラクター」「情緒」の三つに分けておきます。
「初期」って、もうちょっといい名称はないのかって感じですが、黎明期というとカッコ良すぎだし、まだどこかに欠陥があるという間違ったニュアンスが出てしまいかねないので、まんま「初期」で。
「キャラクター」は、実在の人物を書いているはずなのに、え、なんでこんなコミックスライクなのかしら、と首をかしげてしまうお話を集めました。それとも現実ってコミックスだったのかな案外。
「情緒」は「炸裂☆フミオ文学」でもいいんですけど。真似できそうに見えて真似できないのは根っこのソウルが足りてないからですよ。ソウルは換言するなら実体験てとこです。
初期
ロックンロールお正月
カタカナ名詞と体言止めと口語表現がポンポンポポンと小気味よいリズムを生む。内容は、寂しい。
ロックンブロガーは二度死ぬ
映画のダイジェスト版を見ているようなスピード感というか、場面場面のつなぎ目でギュルンと加速する音がして脳内のヴィジョンがピカソの絵画ばりに歪むというか。
キャラクター
4月から課長になる僕が知ってしまった会社の秘密
ヨシムラ君が失踪し、部長がはじめて登場する(多分)。ブレた日常からの現実逃避。
課長になって一週間
ヨシムラ君、元気ですか?
ジ・エンド・イズ・ザ・ビギニング・イズ・ジ・エンド
「届かない思いや、報われない気持ちはどこへ行ってしまうのでしょうか」という出だしで心を掴まれない人は、まあ読まなくてもいいんだけど、掴まれた人はそのまま読んでおしまい!
私の異常なお見合い・発動篇 または私は如何にして謎の教団からの執拗かつ性的な勧誘を退けたか
たった一つの場面のために、すべては惜しみなく身を捧げる。
「あなたたちの神の名は、なんていうの?」僕は深呼吸をして落ち着きを取り戻してから口を開いた。「ロックンロール」
会社ぶっこわしました
この部長さんは、まだ日本にたくさんいるのです。
情緒
ラブホテルをつくろうと母は言った
哀愁。
RCサクセションが流れてた。
人と人の出逢いに重力はあるのか?
青さ
私は夏が好きなんですが、これは夏の熱気に溢れた風が窓から流れ込んでくる感じがする心地よいエントリです。
ロックンロールはふり向かない。
破格の文体で紡ぎ出される情緒やいかに?
とりあえず単品紹介
全部紹介していたらヤヴァイことになりますからね。
不活性で怠惰なアタシの肉体の神秘
ブログ文学は頭にオームでも湧いてるヤツがやるものなのか? 連中は大群でやってきて読者を圧倒して去っていくし、腐っていく。そしてなぜなんだ、そういった頭にオームの湧いている人たちの文章を最後まで読むとちょっぴり切ない気分になるのは。終始同じ調子なのに、なんでちょっぴり切ない系エンドに思えちゃうの?
ニーチェの作り方 - ish
ぶれのない語りがもたらす魅力は強固な地力を感じさせ憧れの的になりますが、その真逆、ぶれることを真髄とする語りというのもありまして、その魅力のほどは、是非とも一読して体感してもらいたいところです。単にぶれるばかりか、地力を感じさせぶれる、ぶれ続けるところが凄まじい……! 多様な書き方を身につけていればこその芸です。そうです、芸です、魅せてこそ、文芸なんです。文学と文芸を分かつラインが見えてくるのも見所です。
容疑者Xの献身 - みそ記
あふう。落ち着きのある文章を読んだ後の感慨は、いちいち語るまでもありません。この長さですから、実際に目を通して体感して頂きたいところです。平和な日常を再確認したくなったとき、お気軽にお立ち寄り下さい。
ニムロデの祈り - 蒸散する物語
ある一瞬の、しかし当人にとっては永遠の、幸福という言葉ではまったく当を射ていない深い集中の世界を語ろうとすると、それだけで文章は長くなります。そんな、筆舌に尽くしがたい一瞬を表現するために、敢えて筆舌を尽くす無謀な挑戦を迫る避けがたい欲望。これを持っている人に私は出逢いたいですし、出逢えたことを感謝します。
(余談ですが、紫のスターなんてあったんですね……)
僕に正論は要らない - Chikirinの日記
Chikirin文学なんてのもあるわけで。
「キャハハ、キモーイ」「キモいよねーキャハハ」 - シロクマの屑籠(汎適所属)
シロクマ先生のブログ。なんだかこういう普通のブログ(?)っぽいのって、憧れちゃいません?
お瑕疵い木目ちゃん、出逢いと別れと再会とこれから - 備忘録の集積
あれ? このブログはなんだ? なんだろう? どこかで見たような気もするが、まあいいや。なんだか気品のあるブログだから紹介しておこう。
単品紹介 −性編−
性にまつわるお話がことごとく印象深いのは愛があるからでしょうか。性のせいなんでしょうか。苦手な人は飛ばして頂戴。読んで欲しいのが本当だけど。
緊急避妊法について(ちょっと追記)(20100106改修) - 歩きつづける ゆり 咲きつづける
はてなに居座っていると様々な面ではてなってしまって、はてなを知る前の心を忘れてしまいがちですが、ブクマなんぞを愛用しているとどうしてもみのもんたざるをえない気持ちになってくるから不思議ですね。ここでは面白おかしい造語と卑猥さに密接したユーモアを学ぶことができます。《はてな取締役の方を思わせるあだ名がついたりもする(※限りなくブルーに近いブラックジョーク)夜のお帽子ですとかは、成人のみなさんはもう知っていると思うので省略します。》なんてのは、社長には悪いのですが吹き出してしまいます。え? おげれつですか? しかし卑猥な話題になればなるほど、言葉選びのセンスがキラリと光ってくるもので、《夜のお帽子》なんてありきたりな比喩と《めずらかな棒》だなんていとおかし表現が仲良く並んでいるのを見ると和やかな気分になってきませんか?
ピルの普及と避妊法の勉強のためにも未成年者こそ読むべきです。
【送信59:性欲】|ミソマン -三十路マンコの品格
いいこと、そこのお若いお兄さん、道ばたを歩いている口臭のキッツいおじさん、あたしはショージキ、巨根とか射精回数とかビンビン持続時間なんてキョーミナッシングなの。強さに執着する武道家がぶっちゃけ強くなれないように、射精に執着し続ける男はセックスの深淵を覗くことすらできないのよ。射精するヤツなんてスケベからほど遠い人種なの。――内容はそんなところ。
文体をどうやって真似ていいのかの理屈は唱えることができません。生物の営みとして当然密接な関わりを持つはずの性がその実、非日常的であるかのように(というか童貞にはまさに非日常的行為なのですが)扱われている現代日本で、あたかも日常的な事柄のように淡々と語り続ける(しかし著者はむろん非日常的内容であることを意識しているという両極の緊張がある)ことが面白い、というところなのでしょうか。分かりません。ただ、個人的には興奮と共に安堵が訪れます。両手がふさがっているときに痒い背中を気持ちよく掻くライフハックと同列になってくれればと思います。
ふたりのこと - nuba
id:nubaさんが書いた中でも私の好みのど真ん中を射抜いているのがこれ。
耽美であること至極!
文句なしのトップ――といいたいところですが、下の鰤さんの文章も捨てがたい。
鰤さん
ホットエントリしたこともあるので皆さんのお目にもとまっているはず。ホット(熱い)エントリというより、ホッとするエントリです。
お祈りと所作 - 鰤端末鉄野菜 Brittys Wake
はぁ……。落ち着きある文章……。
イチローの気配り - 鰤端末鉄野菜 Brittys Wake
イチローの気配りもさることながら、鰤さんの気配りにも……はぁ……。
くぼはしせんせー
窪橋パラボラがカンボジア旅行記のつもりではじめられたことはつい最近知ったばかりです。
子煩悩お盆 - 窪橋パラボラ
現れしは、今は失われし秘伝の筆運び。
時々古風な文体で書きたくなるものですが、これを読むたびにその意欲がそそられます。
となりに立つひと - 窪橋パラボラ
あうー……。ぼくは、かういふものにたいして、うまくかたることばをもちませぬ。ただ、まぶしい。
勝間勝代ネタ
夏目漱石の小説「夢十夜」に倣って創作された連作不条理短編小説として書かれたリレー小説。紹介するのはその締めくくりの第十夜。リンク先の下の方から第一夜〜第九夜へ飛べます。未だ全夜読んでいないことは内緒です。
勝間和代十夜
増田文学
はてな名物、増田文学。
「痴漢です!」その一言で車内の空気が変わった。
どこかズレてるよね。ズレたまま話が進んで、最後は投げっぱなしシャーマンだ、歌えばすべて良し!
親友が虎になってた。別れたい…
山月記改変ネタ。
昨日、彼女が、
読点なしにどこまで意味が通じるか? 自在の呼吸が求められる!
勃起が止まらない
畳みかけるような文章ならこちらも負けてはいない! 作者はブコメで自首しています。
http://anond.hatelabo.jp/20090401235551
人の心理をどこまで言語化できるのか?
内容についてはangmarさんのブコメがすべてを語っている。
「ごめんねごめんね」って言いながら小突き回してるエントリ。主旨としては「ヘラヘラ笑える弄られキャラにならないと自殺するまで苛められるよ」というのをオブラートで包みまくったために無駄に長文
酔歩する彼女
なんだろう。淡々としていて雰囲気がある。
http://anond.hatelabo.jp/20080725163858
ナプキンの話。フェティッシュな視線は文学の初歩。ていうか男はなんだかんだで女の生理のこと知らないまま生きていく気がする。もっと教えて!
セイテキコウフン
自意識ドキドキ。
最後に
ああ、やっと終わった、長い戦いだった。
振り返ってみると、上から目線連発でごめんなさいです、絵文字でよければ土下座しますので、紹介された中でコンチクショーと思った人はおっしゃってください。平に、平にご容赦くださいませー、と平謝りしますので。あれ、意味違うかな、平謝り。
他にも多くの「読み物」タグをふったブログがあるのですが、手間がかかるからめんどくせーまだ技を盗めていないのでここでは出しませんでした。他にも、紹介したら迷惑かなと思うところもあれば、今紹介するのは時期的にマズイというところもありまして、自主的に控えさせて頂きました。
皆様、脳髄の空腹を満たす名文に出逢えましたでしょうか? わたしゃお腹いっぱいです。もう食べられない。ということで、本日はお開きです。ご静聴(読了?)ありがとうございました。