ワンピの敵役賛美――底知れぬ監獄所長
前置き
面白さが加速を続け留まるところを知らない『ONE PIECE』もすでに56巻目に突入です。ジャンプ購読組には最終回も近いのではないかという人までいます(尾田先生が今は全体の半分と宣言してますけどね!)。今後とも応援を続けていきたい漫画であり、先の展開の気になる漫画でありますが、コミックス派としては次が出るまで我慢です。
さて、今回のエントリで持ち上げるのは、もちろんのこと大監獄インペルダウンの所長を務めるマゼランです。ルフィ一味が監獄を脱したのでルフィvsマゼランの展開はひとまずここまでと思われるので、56巻までを参考に語ってみたいと思います。






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勝てないルフィ
ここのところの『ONE PIECE』が特別面白いのは、シャボンディ諸島で一億越えのルーキーが出揃ったり、黄猿や七武海最後の一人ハンコックの登場、監獄での懐かしの面々の再登場といった具合に大勢の魅力的なキャラに依存するところが大きいのですが、個人的にはルフィが勝てなくなってきたところがすごくポイント高いと捉えています。
たとえば、青キジにルフィは戦闘面で完膚無きまでに敗北を喫します。海軍大将の強さを知らしめると共に、レインベースでのクロコダイルとの初戦でも圧倒されていた通りで、ロギアの悪魔の実の強さを決定づけました。
これを受けてルフィは当然パワーアップを余儀なくされたわけで、ギア2ndとギア3rdを身につけるわけですが、ロギアへの解答にはまったくなっていません*1。ロブ・ルッチ、ゲッコー・モリアと大物を撃退していくルフィですが、黄猿、戦桃丸、パシフィスタの集団戦で撤退を余儀なくさせられました。
もっと強くならなければならない上に仲間と合流しなければならないという課題を残したままルフィは忙しなく次のステージ、インペルダウンへ向かいます。
そこに登場するのがマゼランです。
勝てるのか? 勝てないのか? この二極で揺れるハラハラ感は初期の『ONE PIECE』にはない要素です。
ドクドクの実
マゼランはドクドクの実の能力者です。いいですね、実にいい! 彼の能力の設定は絶妙なバランスの上に成り立っています。
ロギアが相手ではルフィは手も足も出ない。かといってパラミシアの能力者に大監獄の所長が務まるのかはちょっと疑問だ。クロコダイルのような大物もいる。七武海にも勝ったことのあるルフィを相手にできるほどの説得力ある実力を用意しなければならない。じゃあどうするのか。――と、思案のしどころです。導き出された能力は、ジョジョのスタンドのように毒の媒介であるヒドラを操るスタイルで、これはパラミシアでもロギア寄りの形態といえます。毒ガスという気体での攻撃方法があるところもロギアっぽさを見出せます。監獄の所長らしく彼自身はどっしりと構えたままでいられるのも絵として映えます。
悪魔の実にはカナヅチになるというデメリットがありますが、ドクドクの実の場合はさらに腹を下しやすくなるというデメリットがあります。マゼランの能力が規模、威力ともに際立っているのは本人の資質や鍛錬の結果でもあるのでしょうが、こうしたデメリットがあると得心がいきます。(カナヅチという弱点で決着がつくような漫画ではないので、腹を下しやすいという弱点で勝敗が揺らいだりといった描写は皆無でしたが、それはそれです)
毒ならば解毒剤が使えるというところもいいですね。解毒剤で駆け引きができますし(繰り返し、そういう漫画ではないわけですが)、解毒剤が有効という情報のあるなしで戦術も変わってきます。黒ひげ一味はマゼランの毒に壊滅しますがシリュウが持ってきた解毒剤に救われています。
マゼランの力量
七武海を退けてきたルフィをものともしない毒攻撃で圧勝したところは「勝てないルフィ」の現状に上塗りする形で絶望感をもたらしました。復活してからもルフィは単独では応戦できませんでしたし、仲間と力を合わせても一時しのぎがせいぜいでした。
ルフィに荷担していたクロコダイルとジンベエはマゼランの相手をしません。先を急いでいるからでもありますが、まともにやりあうのはリスクが高いと考える余地は十分あります。
しかしそれよりも何よりもおいしいのは、マゼランが黒ひげ一味を秒殺したところですね、黒ひげ一味はいずれ麦わらの一味と全面衝突するであろうパーティなのにマゼラン一人にあっさりと全滅です。将来のボス的キャラクターを噛ませ犬にする流れがマゼラン株を天井知らずに高めました。
結局、マゼランが苦戦する場面は描かれていません。ルフィの攻撃を受けて膝を突いたのがやっとというところです。未だ底の知れないキャラクターです。黒ひげ一味(シリュウ含む)がまだ監獄にいるので、再び戦闘の描写があるかもしれません。マゼランの底が見える日はやってくるのでしょうか。
*1:ちなみにブルーノを賛美しているエントリを見てもらえれば分かるのですが、私はギア2ndにそうとう興奮したクチです。