ワンピの敵役賛美――CP9のナンバーワンはブルーノ

ブルーノこそがCP9でもっとも悪役していた

 動物系の実の祭であったウォーターセブン編。ブルーノに当てられた動物は牛だったが、あくまでイメージであり、能力はドアドアの実。
 CP9のなかで最初に敗北を喫したのがブルーノだった*1。そんな彼が好きなのは、もちろん主役ルフィを持ち上げるための名悪役として機能していたからだ。ルフィがはじめて披露するギア・セカンドにつきあって、見事に噛ませ犬役を演じた彼には深い愛を覚える。噛ませ犬といえばネット環境ではヤムチャが基本だが、ヤムチャのように調子に乗りすぎていては所詮ベラミー的な安っぽい噛ませ犬止まり。ヤムチャのように脆くてもまた、ベラミーのごときレベルに留まる。ブルーノがベラミー(ワンピにおけるヤムチャ)を超えて素晴らしいのは、その寡黙な雰囲気とそれに相反してお喋りなところ。

ブルーノの魅力、その1――寡黙

 だいたいね、闇の暗躍機関CP9とかいっておいてね、みんなお喋りすぎる。ウォーターセブンでスパイ活動をしていた四名はまだいいが、他の連中はほんとうに与えられた役割を全うできるのだろうか? 戦闘以外に能がないように思われる。寡黙な雰囲気を最後まで貫いたのはロブ・ルッチとブルーノのみ。まあ、それは本当は雰囲気だけで、実際には二人ともよく喋る。ブルーノは親切にも「今お前達がやっていることは世界的犯罪だ」と指摘してやるわけで。そんな無駄口を叩きながらも寡黙な雰囲気を守り続けたところが好印象。

ブルーノの魅力、その2――頑強さ

 打たれ強い。これは大事。いっぱつで片づいてしまうようでは相手の真に強い部分を引き出せない。幸い六式には防御技「鉄塊」がある。CP9の面々はそれぞれで六式をアレンジしているのだが、ブルーノの場合特に深く極めているのが鉄塊で、最強の鉄塊である「鉄塊・剛」までご披露してくれる。まさに必殺技の的としての役割。なんて素敵なんだ!

ブルーノの魅力、その3――顔でかい

 顔の大きさは重要。顔が大きいということは表情を描きやすい。コマいっぱいの顔となるため驚愕しているところが映えるのなんの。平べったくて、唇が分厚くて、やや眠たそうなおめめが驚いたときには大きく開かれるブルーノちゃん。
 魅力その1の寡黙なイメージというのは、そのまま真面目なイメージとなる。それは戦闘を分析するブルーノの冷静な態度に現れる。その冷静さ、真面目さが驚愕に染まるとき、素敵なギャップが生じる。JETピストルをはじめて体験し、「全く見えん!!!」と驚いているところなんて惚れてしまいそう。

ヤムチャは保護されているッッッ とかいってみたり

 以上、三つの魅力が互いに密接に関係してブルーノを構成している。このルフィvsブルーノの場面は、ワンピでも屈指のスピード感と興奮を備えている。のどごしすっきりの噛ませバトル。某死神漫画なんかは噛ませが多いのだが、割り箸を折っているような退屈がある。一方ワンピはダイヤモンドと岩をぶつけ合うような派手さがある。ダイヤモンドが勝つのは分かっているが見ていて小気味よい。
 よい仕事というものはあまりに地味である。ブルーノほどの華麗な噛ませ役は滅多に見ない。ヤムチャは実のところ噛ませ役としては物足りない。彼はそもそもキャラクターとしての人気があるために愛され、愛ゆえにネタにされるのであって、噛ませ役としては保護されているッッッ!! と断言できよう。
 そもそもブルーノが真っ先にやられたのは彼の応対が早かったためだ。CP9の仕事をちゃんとしていたということ。彼に幸のあらんことを!

*1:四式の使い手? 海イタチのネロ? 誰?