イーストブルー編のボスはアーロンだった。
続くグランドラインの最初のパート、バロックワークス編のボスはクロコダイルだ。
尾田先生の演出のうまいことには舌を巻く。クロコダイルほど丁寧に悪役を全うしたキャラクターは、まだワンピにはいないのではないか。
絶対に倒さなければ次のストーリーに進めない、初めての七武海*1。
アーロンの四倍の賞金額*2。
モクモクの実、メラメラの実に続いて登場した三つ目の自然系悪魔の実であるスナスナの実。モクモクの実の能力者スモーカーからは逃げる以外の策がなかったことを思うと絶望的。
犯罪組織バロックワークスのボスを務める組織力と野望。
檻に閉じこめたルフィ達とのやりとりや、本物の鍵は懐にしまったまま偽物の鍵をワニに食わせてビビをけしかけるところなんて真面目な悪役ぶりじゃないですか。希望がありますよと見せかけておいて実はいかさまをしているだなんてカジノのオーナーらしくていい。(だからこそ、それを出し抜いたサンジが一層格好いい)
ルフィとのレインベースでの一回戦にて圧倒的な勝利を収めるところは、ボスらしい風格に満ちている。二回戦でも、弱点を突かれているのに動揺しない。三回戦、能力での優位が失われても正面から受けて立つ自負心。
何から何まで素晴らしい。その悪役の魅力において、歴代のボスとはひと味違う。魅力でクロコダイルに肩を並べられるやつはまだいない。ゴッド・エネル? サバイバルを開催しただけの若造じゃありませんか。ロブ・ルッチ? 危ないお兄さんというだけで彼の行動は個人の趣味の域を出ていません。ちっぽけすぎる。ゲッコー・モリア? 部下の統率力や組織力、天下を狙う計画とそれに対する行動力においてクロコダイルの足元にも及びませんぜ。
しっかし、クロコダイルはその戦闘力だけならどこまで通用するのだろう。コミックス派の私は覇気とかいう新要素については知らないので(知りたくないので)、それについて目をつむると、自然系能力者は超人系や動物系の攻撃をほぼ受け付けないので*3、肩を並べられるのは同じく自然系能力者となる。その候補は――
スモーカー/モクモクの実
エース/メラメラの実
エネル/ゴロゴロの実
青キジ/ヒヤヒヤの実
ティーチ/ヤミヤミの実
黄猿/ピカピカの実
か。
だがクロコダイルはそもそも七武海に加盟しているわけで、海軍に在籍しているスモーカー、青キジ、黄猿とは戦う必要がない。というよりは無駄に戦わずにすむよう七武海に加盟したのだと想像する。他の七武海の面々と比較すると一桁少ない額であることからも、何かうまい策を打って加盟したものと見なせる。ティーチはクロコダイルの後任として七武海に加盟したのだが、なんにしろ争う機会はなかったかな、と考えられるので強さを比較する必要もない(ヤミヤミの実はまだ未知数で評価しにくいし)。
また、アラバスタという砂の国に身を置いているのは、そこがスナスナの実の能力を最大限に引き出せる土地だと心得ているからである。もちろん、軍事兵器プルトンを探し求めていたという理由もある。クロコダイルはエネルのように自分の能力だけに頼るようでは世界を支配できないと考えていたのであって、それこそがエネルやモリアに勝る彼の悪役的頭の良さを示している。
クロコダイルは、海軍の連中にしても七武海の連中にしても、プルトンを手に入れてから相手をするつもりだったのだろうから、いわば作戦途中であり彼らとの勝敗を断じることはできない。残るエースはどうか。スモーカーとエースが戦ったときのように勝負はつかないのだろう。
……結局、戦闘力のみに着目して考えることはできなかった(クロコダイルらしさを捨ててまで比較する意味はないのだから)。